第三百三十六夜   当直の夜、消灯時間の見回りを終えて事務所に戻り、珈琲メーカのスイッチとテレビの電源を入れ、スポーツ・ニュースを探してチャンネルを弄る。 老人介護施設の当直といっても、重い病気や痴呆の入居者が […]
第三百三十五夜   ガサゴソと周囲が騒がしくて目を覚ますと、カーキ色のドーム型の天井が目に入る。寝惚けた目を擦ろうと動かした腕が寝袋に阻まれて、昨日からキャンプに来ていたのを思い出す。 もぞもぞと動いた私に気付 […]
第三百三十二夜   風呂を上がって髪にタオルを巻き、部屋着に着替えるとようやく一心地付き、帰宅したという安らぎが得られた。 厳密にはまだ鼻はムズムズするし目も痒いのだけれど、これは風呂を上がってしばらくすれば治 […]
第三百三十一夜   いつもの様に夕飯の買い物から帰って玄関の前へ自転車を停め、蛇腹の門扉を閉める。 花粉も飛び、そろそろ啓蟄というのに、六時を回ると辺りはすっかり暗く空気も冷える。歳で曲がった背中を寒さで更に丸 […]
第三百二十九夜   パート帰りに買い物をして、それを冷蔵庫に詰めながら夕食の献立を考えていると、普段は日溜まりで寝てばかりいる三毛が脛に絡み付いてきた。 買い物ついでおやつを買ってきたとでも思ってねだっているの […]
第三百二十七夜   マスタードの効いたソーセージを齧り、口の脂をライムの効いたカクテルで流す。週に一度、今週も折り返しまで頑張った自分への褒美として、仕事帰りに楽しむ「いつもの」メニュだ。 大きな繁華街の隅にあ […]
第三百二十六夜   小春日和の陽気から一転、日の暮れた街の冷たい風に肩を窄めながら、冷蔵庫の中身で何が作れるか思案しつつ帰途を歩く。 駅前と私の住むアパートのある住宅街とを区切るように流れる幹線道路の信号に引っ […]
第三百二十四夜   妻がインフルエンザで床に伏せたために、娘達の弁当など慣れない朝の支度に手間取って、家を出るのが普段より三十分ほど遅くなった。 最寄り駅までの道を人の流れに沿って歩きながら、今晩はどこかで妻の […]
第三百二十二夜   温かい布団の魔力からいつもより三十分も早く抜け出し、母に急かされながらどうにか支度をして家を出ると、冷たく湿度の高い空気が頬に絡みつき、吐く息が顔の前で白くなった。 ――暖冬暖冬といいながら […]
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