第三百二十九夜
パート帰りに買い物をして、それを冷蔵庫に詰めながら夕食の献立を考えていると、普段は日溜まりで寝てばかりいる三毛が脛に絡み付いてきた。
買い物ついでおやつを買ってきたとでも思ってねだっているのだろう。ニャアニャア鳴くのに適当に返事をしながら買い物を片付ける。
片付け終わって彼女を見ると、台所に掛けてある手拭き用のタオルを咥え、寝床にしているキノコ型の屋根付きクッション・ハウスへ運び込む。暫くしてまたこちらへ駆け寄り、私を見上げてニャアと鳴く。
どうしたの、とおやつを棚から取り出してみせるが、いつものように座って待つことをせず、食卓の椅子へ上って布巾に鼻を近付け、またニャアと鳴く。
どうやらタオルが欲しいらしいと察し、布巾を摘んで目の前で揺らしてやるとそれには取り合わずまたニャアと鳴く。
布巾が湿っているのがお気に召さないのかと思い至って脱衣所の収納へ乾いたタオルを取りに行くと、足元についてきて、小さな口にタオルを受け取るとまた寝床へ持ち込む。
寝床の床に設置したヒータが故障でもして寒いのかと様子を見てみるが、正常に動作している。
何かストレスを与えているのなら改めねばと、タオル集めの原因に思いを巡らしながら米を研いでいると、三毛が寝床から飛び出して玄関へ駆けて行き、続いて玄関の扉の開く音がして、娘が私を呼ぶ声が響く。
米の水気を切って廊下へ出ると、とてとてと早足で居間に戻る三毛とすれ違う。何か、黒っぽいものを咥えていたように見えた。
気になりつつも玄関の娘の元へ向かうと、彼女は床に置いたボール箱の後ろにしゃがみ込んでこちらを見上げる。箱の中ではフリースの膝掛けか何かの上で、やや大きいがまだ目の開かない三匹の子猫が身を寄せ合い、ミ、ミと鳴いている。
娘がどこそこで鳴いてて可哀想だった、自分で飼い主を探すから暫くうちで面倒を見てあげたいと訴えている間に、また三毛がやってきて一匹を咥えて居間へ消えていく。
タオルを欲しがったのはこのせいかと感心しながら、
「三毛だけじゃなくあなたもちゃんと面倒をみるのよ。全部は飼いきれないから、飼ってくれる人もちゃんと探すこと」
と宣言すると、娘は元気に頷いて靴を脱ぎ、ダンボールを三毛の元へ運んで行った。
そんな夢を見た。
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