第三百三十九夜
コロナ・ウィルスの影響で、我がサークルでも会議が開かれた。といっても、メッセージ・アプリのグループ・チャット上での会議である。大学も施設の利用はほぼ停止して、入学式の日程すらも検討中だという。知っている者同士ならば問題ない、大学の近くの馴染みの飲食店に場所を借りようという声もあったが、皆が楽観的な訳でも、公共の交通機関を利用せずに通えるほど近所に住んでいる訳でもない。結局、感染の虞のない形を取ることになった。
なったはいいのだが、そもそも国も地方自治体も大学も、具体的な方針、強制力のある指示を打ち出していない以上、実りのある議論は出来ない。入学式前後の勧誘活動は、サークルにとっては死活問題なのだが、特に手の打ちようもなく、前年通りのスケジュールを組み、印刷屋にも例年通りの部数だけビラを注文することに決まった。
三々五々、グループ・チャットから退室してゆく中で、
――就職活動の話なんだけど、〇〇っていうところは絶対に応募しちゃ駄目だっていう話、皆知ってる?
という書き込みが見える。何となくそれが気になって、勉強の準備をしながら見ていると、興味を示す者達の反応が続き、言い出した三年生が詳細を書き始める。
――飽くまで、先輩から聞いた噂なんだけど、そこの会社はホーム・ページからエントリィ・シートを入力して応募するらしいのね。
――名前、住所、連絡先、大学名や学部名なんかを入力して。
――で、送信するとエントリィを受け付けた、後日改めて連絡するって画面だけが表示されて、それ以降絶対に連絡が来ないんだって。
別の子が、
――わざわざ専用サイトまで用意して、どうしてそんなことを?
と書き込むと、
――名簿屋っていうのかな。個人情報を集めて売るんじゃないかって、先輩が言ってた。
社会経験の無い学生の、一生に一度の機会までも喰い物にしようとする悪意に、首筋が薄ら寒くなった。
そんな夢を見た。
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