第八百十三夜    郊外にある大型ショッピング・モールからの帰り道、 「あれ、公衆電話だ。まだあるものなんだな」 と運転席の夫が、顎を前に出した。その方向を見ればなるほど、横断歩道の階段の下に花を咲かせた夾竹桃 […]
第八百十一夜    帰り道の量販店で何を買おうかと考えながら荷物を片付けていると、同じサークルの友人からメッセージ・アプリで連絡が来た。 ――今週の土日、どっちか暇だったりしない? 後期から土曜は午前中だけ講義 […]
第八百十夜    次のアポイントまで一時間ほど時間が空いてしまい、客先近くの大型商業施設の駐車場に車を停めた。小糠雨が降り続く中を喫茶店まで歩くのも面倒で、細々した仕事は車内で済ませることにする。  周囲が静か […]
第八百九夜    一限の授業を終えて三限まで暇になり、図書館で勉強をしているとメッセージ・アプリの着信を知らせる振動が鞄から響いた。同じような境遇の友人から、昼休みに入る前に学生食堂で一緒に昼食をとのお誘いのメ […]
第八百六夜    文化祭終了を告げるアナウンスが流れると、来場客が続々と校門へ向かって移動を始めた。その流れに逆らうように生徒達が各々の教室に戻って来る。ここから僅かな時間で後片付けをしなければならない。担任が […]
第八百五夜    始業時間まで二十分ほど、早足で事務所へ入り、既に出勤していた同僚二人に挨拶をしながら席に荷物を置いて、そのまま奥のトイレへ向かった。食中りというほどではないが、朝から少々腹の調子が悪い。  用 […]
第八百三夜    駅から徒歩五分の間に吹き出した汗をタオルで拭いながら事務所に入ると、既に冷房を効かせていた同僚がおはようと声を掛けてきた。その声の調子がどうも弱々しい。何かあったかと尋ねると、昨晩女性に振られ […]
第八百二夜    半年振りに出張で東京へ行っていた同僚が、土産のお菓子で膨らんだ紙袋を手に出社してきた。そこから一つを取り出して他の同僚に手渡し皆に配るよう頼むと、残りを休憩室に運び込む。  給湯室でお茶を淹れ […]
第七百九十九夜    トレイに載せたカップ二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、私、ついにちょ能力に目覚めた!」 と聞こえてきた。  私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服 […]
最近の投稿
アーカイブ