第七百八十一夜    教室棟入口の扉の前、長く張り出した庇というよりは洋風のポーチというべきか、兎に角雨のしのげる場所に辿り着いて傘の雨を払う。重い木製の扉を肩で押し開けると、例年より遅れた梅雨入のためか梅雨寒 […]
第七百八十夜    大学のサークルの先輩に誘われて、彼の車で郊外の大きな娯楽施設へ行くことになった。サークルの仲間四人で大学の最寄り駅に集合し、ロータリへ入ってきた先輩の車に乗り込んで走り出すと警告音が鳴り、 […]
第七百七十八夜    路傍に立つ警官に交通規制の詳細を尋ね、礼を言って窓を閉めながらアクセルを踏むと、 「凄い人出ですね」 と助手席から声を掛けられた。 「私も地元出身じゃないのであまり良くわかっていないんです […]
第七百七十七夜    同僚が右目に眼帯をして出勤をするようになって二週間が経った。始めは特に気にしてもいなかったのだが、モノモライというのはこんなに長引くものだったろうかと気になって、昼休みの暇に、 「目は、ま […]
第七百七十六夜    目が覚めると低く唸る機械音と床の揺れに辺りを見回し、直ぐに自分が船に乗っていることを思い出した。仕事で飛行場の無い離島へ一晩掛けて向かうフェリーの中、雑魚寝で床に押し付けられていた側の尻や […]
第七百七十三夜    たまの休日に夏物の服を買い込んだ帰り、大きな紙袋を抱えてそのまま帰宅するのも味気なく、ちょっと休憩しようかと喫茶店に立ち寄った。レジでカロリの塊のような飲み物を頼み、小さなトレイに載せて出 […]
第七百七十一夜    とある月末、今年度になって転属してきた同僚と二人で小さな事務所の一室で黙々と作業をこなしていると、不意に同僚が、 「ん?」 と小さく鼻から声を出した。彼女は私と違い、普段、作業中に独り言を […]
第七百七十夜    友人と映画を見た後、一緒に甘いものを突付きながら一頻り感想を話し合った。映画の話題も尽き、紅茶も冷めきったところで友人がトイレに席を立ち、こちらもぼちぼち退店の準備をしようかと荷物をまとめ始 […]
第七百六十八夜    二十二時まで一時間、店に着いてバックヤードで簡単な着替えを済ませ、店内に出る前に済ませておくべき仕事に取り掛かる。雑務は色々あるけれど、その多くは状況の動かない深夜になってから、お客の来な […]
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