第六百九十夜   明日から三日遅れの盆休みとなる仕事帰り、向こう数日分の食料を求めて大型量販店の自転車置き場へ入ると、普段よりずっと空いていた。 ――ああ、やはり世間は盆休みなのだな と納得しながら鍵をかけて入 […]
第六百八十八夜   この酷暑の中を歩き回ったお陰で半ば熱中症になったのだろうか、頭に冷水を浴びると頬を伝う水が僅かな間にぬるむほど熱を持っていた。そのまましばらく頭にシャワを浴び続け、漸くすっきりして浴衣を羽織 […]
第六百八十六夜   大学時代の友人の結婚式にて、控室で久し振りに会った友人達とお喋りをしていると、そのうちの一人の様子が気になった。お琴やお茶を習っているという彼女は大学生の頃から和装が好きで、機会があれば品良 […]
第六百八十四夜   焚き火で沸かした湯で珈琲を淹れながら同じ湯で濡らしたタオルで顔を拭いていると、薪を拾いに行っていた友人二人が戻ってきた。両腕には虎ロープで束ねた茶色く枯れた笹や杉の小枝を抱えている。炭に火を […]
第六百八十三夜   期末試験が終わって夏休みまでの準備期間のような朝、高校の最寄り駅からの通学路を歩いていると後ろから自転車でやってきた級友に声を掛けられた。 振り向いて挨拶を返すと彼は汗だくの顔に妙に清々しい […]
第六百八十二夜   知人の紹介で隣県から初めて受けた依頼の打ち合わせに初めて行った帰り道、少々悩んだ末に海岸沿いの遠回りではなく、行きに通った山中の最短ルートを戻ることにした。夏至から間もないから日が落ちるまで […]
第六百八十夜   うだるような夏の午後、いつも通り閑古鳥の鳴く店内でお手製のかき氷をスプーンで突付いていると、硝子の棒の触れ合う涼やかな音が店内に響いた。戸外の熱気と共に店へ入ってきたのは体格の良い短髪の男性で […]
第六百七十九夜   陽が暮れてなお蒸し暑い中を帰宅し、郵便受けの中身を確認してゾッとした。チラシの類に紛れて一枚、見覚えのある葉書が見えたのだ。 昼の熱気を蓄えて蒸し暑い部屋に入り、荷物を置いて冷房を掛けてから […]
第六百七十六夜   始業時間前に淹れたコーヒーを飲みながらデスクでニュース記事を眺めていると、珍しく遅めにやって来た部下の一人が慌て気味にデスクに着くのが目に入った。 ここのところ顔色が優れなかったこともあり、 […]
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