第六百七十六夜   始業時間前に淹れたコーヒーを飲みながらデスクでニュース記事を眺めていると、珍しく遅めにやって来た部下の一人が慌て気味にデスクに着くのが目に入った。 ここのところ顔色が優れなかったこともあり、 […]
第六百七十五夜   夏至が近付いて随分陽が長くなった。七時を回って尚薄明るい中を最寄り駅から自転車に乗って帰宅すると、先に帰宅して、犬とともに出迎えてくれた妻に元気がない。どうかしたのかと尋ねる私に、彼女は右手 […]
第六百七十二夜   気象庁が梅雨入りを発表した週の休日、朝食を摂りながら見た天気予報で「今日は貴重な晴れ間」と言うのを聞き、溜まっていた洗濯物に手を付けることにした。 アパートから徒歩三分ほどの位置にあるコイン […]
第六百七十一夜   塾からの帰り道、駅前の繁華街を抜けて住宅街へ入ると、辺りが急に暗くなる。住宅街の端の団地住まいの友人がいて本当に良かった。 住宅街の中程、神社と元酒屋のコンビニエンス・ストアが並ぶ一角、小綺 […]
第六百六十七夜   学食で友人達と集まって昼食を摂り、次の授業まで時間のある者数人が残って世間話をしていると、 「日曜日、バイト先で変なことがあって……」 とそのうちの一人が言い出した。 彼女は大学入学後ほどな […]
第六百五十九夜   休日の朝早く、割と仲の良いバイト仲間が入院したから代わりに入ってほしいと店長から連絡が来た。半日仕事をした後、都合のつくときに見舞いにでも行こうかとメッセージ・アプリで連絡を入れると、入院し […]
第六百五十七夜   事務所を出て春雨のしとしとと降る中を小走りに駆け、倉庫の錠前を外して中に入ると、バケツから固く絞ったモップを手にとって掃除を始める。 うちは小道具貸しの小さな会社で、都からほど近い田舎に倉庫 […]
第六百五十六夜   仕事帰り、最寄り駅と半ば一体化した商業施設に入った本屋で一冊の単行本を買った。単行本といっても漫画である。自分でもいい歳をしていつまで集めるものかとも思うが、集め始めた小学生の頃から連載が終 […]
第六百五十二夜   山桜の名所にほど近い温泉宿を独り訪れた。仲居の勧めるままに頼んだ地酒で気分の良くなったところで部屋を出て時限の迫った大浴場に入ると、日中桜見物に歩き回った疲れが身体の中でどろどろに溶けたよう […]
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