第六百八十八夜

 
この酷暑の中を歩き回ったお陰で半ば熱中症になったのだろうか、頭に冷水を浴びると頬を伝う水が僅かな間にぬるむほど熱を持っていた。そのまましばらく頭にシャワを浴び続け、漸くすっきりして浴衣を羽織ってユニット・バスを出ると、冷たく乾いた冷気が火照った身体に心地好い。

晩酌の前に今日最後の一仕事を済ませてしまおうと、ホテルの無線に繋いだノートPCのスリープを解除すると、期待通り上司から先程のメールへの返事が来ている。
――ご苦労さん。後はまた週明けに。良い週末を。ところで途中に変な写真が何枚かあったけど、あれは何?

文面を読んで首を撚る。今日の仕事はとある廃ホテルとその周辺の調査だった。比較的新しい建物なのだが数年前に廃業し、買い手を探している。そこを任されている地元の不動産屋に案内されながら写真を撮った。不動産屋の資料とともに評価したレポートを上司に上げるまでが自分の仕事だが、ひとまず写真と簡単な感想を上司に報告してから風呂に入ったのだった。
――変な写真ですか?済みません、壊れたファイルか、誤って撮り損ないを送ってしまっていたでしょうか。

簡単に謝罪の言葉を送っておき、送信済みのメール・ボックスから、社のサーバへ送った画像を確認する。ざっと一覧を眺める限り、ファイルの壊れたような異常な画像は見当たらない。やはり撮り損ないがあるだろうか。
一枚ずつ確認をしていると再び上司からのメールが届き、ファイル名の指定があったのでそれを開く。

と、それは宴会場の写真だった。外壁から遠く外光の入らない都合上、手持ちの大型懐中電灯とカメラのフラッシュだけで撮った暗い写真で、フラッシュの当たる中央と、画面右奥に非常口を示す緑色の誘導灯の他はほとんど黒く潰れてしまっている。
――色調補正か、他に同じ部屋をとった写真でマシなものが無いかを確認します。
と返事をすると、直ぐに、
――いや、そうじゃなくて。そこって今は電気が通ってないはずだよね?
と返事が返ってきた。

そんな夢を見た。