第七百六十三夜    大型連休に遊ぶ金も無く、食費を浮かせようと実家へ戻った。そこは今まさにお兄夫婦が生まれて間もない初子を育てている真っ最中で、邪魔者扱いされるかと思いきやこき使える人手として歓迎はされたが、 […]
第七百六十二夜    事故で大幅に遅れた列車に朝から不機嫌に事務所に着くと、いかにも寝不足と言いたげな隈を目の下に作った同僚がデスクの前で虚ろな目をして珈琲をスプーンで掻き回していた。その余り窶れた様子に自分の […]
第七百六十夜    久し振りの酒の席で、少々飲みすぎてしまった。疫病騒ぎで新入社員の歓迎会が開かれたのは四年ぶりだったろうか。今でも政府やマスコミが騒がないだけで、病院へ行けば医療関係者は警戒を緩めていないのが […]
第七百五十九夜    仕事から帰って来ると、普段にも増して騒がしい息子とそれを羨ましげに目を輝かせる娘、そして普段になく憂鬱そうな妻とが出迎えてくれた。三人揃って出迎えてくれる絵面と言うだけでも十分に珍しいのに […]
第七百五十八夜    ふと目が覚めると付け放しになっていたTVの画面左上に九時を少し回った時刻が表示されていた。晩酌をしながらうたた寝をしてしまっていたらしい。浴衣にどてらを羽織っただけの姿だったので、まだアル […]
第七百五十六夜    デートから帰って荷物を下ろすと、彼女が真っ先にしたのはスマート・フォンの充電だった。肩に掛けたターコイズ・ブルーの鞄から充電器とスマート・フォンとを取り出すと、卓袱台の脇に伸ばしたマルチ電 […]
第七百五十五夜   「うーん、こんなことってあるんですね」 と思わず独りごちたのを、男性社員がどうかしたのかと拾ってくれた。折角気にかけてくれたのなら、店の締めの作業の傍らの雑談がてらにと、昼に売られてきた高級 […]
第七百五十四夜   工房の責任者との商談はお互いに笑顔で纏まった。こちらの提示した条件に彼は始め狐に抓まれたような顔をして、眉に唾をつけるようにしてこちらの顔色を窺っていた。 こちらの条件が破格だったというより […]
第七百五十三夜    用を足してトイレを出ると、冷たい強風が首筋から体温を奪って首が竦んだ。彼女の姿はまだそこになく、出てくる前に何か温かい飲み物でも買ってしまうべきか、彼女の出てくるのを待つべきか悩みながら、 […]
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