第七百七十三夜    たまの休日に夏物の服を買い込んだ帰り、大きな紙袋を抱えてそのまま帰宅するのも味気なく、ちょっと休憩しようかと喫茶店に立ち寄った。レジでカロリの塊のような飲み物を頼み、小さなトレイに載せて出 […]
第七百七十二夜    部活帰り、へとへとの友人達と歩く商店街には香辛料の香りが漂っていた。最終下校後の帰り道も、五月も末が近づいて随分と明るくなったものだと季節の巡る早さに驚く。もうすぐ高校最後の地方大会が本番 […]
第七百七十一夜    とある月末、今年度になって転属してきた同僚と二人で小さな事務所の一室で黙々と作業をこなしていると、不意に同僚が、 「ん?」 と小さく鼻から声を出した。彼女は私と違い、普段、作業中に独り言を […]
第七百七十夜    友人と映画を見た後、一緒に甘いものを突付きながら一頻り感想を話し合った。映画の話題も尽き、紅茶も冷めきったところで友人がトイレに席を立ち、こちらもぼちぼち退店の準備をしようかと荷物をまとめ始 […]
第七百六十九夜   「お姉ちゃん大変!」 と、スマート・フォンの室の悪いスピーカから子供の金切り声が半ば音割れして鼓膜を刺した。小学生らしく朝からテンションが高いと評するべきか、自分も兄も割と子供の頃から朝は弱 […]
第七百六十七夜    二日ぶりにすっきりと五月晴れの空の下、コンクリートに敷いたハンド・タオルの上に腰を下ろす。晴れた日には事務所の入ったビルの屋上でこうして日光浴を兼ねて昼食の弁当を食べるのが私の習慣となって […]
第七百六十六夜    何やら食欲をそそる香辛料の香りとともに、ジュウジュウとフライパンか何かでものを炒める音が聞こえて目が覚めた。眩しさに薄目を開けて首を巡らせると、台所とも呼べないような廊下の一角、小さな流し […]
第七百六十五夜    連休の谷間のある日、講義の時刻に間の空いた者がサークルの部室に数名集まった。各々、スマート・フォンでゲームをしたり、課題を片付けようとコピーしたテキストにマーカとペンとで何やら書き込んだり […]
第七百六十四夜    たまの休日に遅く起き、顔を洗ってさっぱりしたところで昼前から酒でもと冷蔵庫を開けて、酒のストックを切らしていたことに気が付いた。この小さな贅沢のツマミに昨晩、出来合いの惣菜を買っておいたの […]
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