第七百九十七夜    深夜勤務のためにバック・ヤードへ入って着替えを済ますと、今日はシフトに入っていないはずのアルバイトの高校生が笑顔で立っていた。彼女が笑顔なのはバイトの面接で初めてあって以来いつものことで、 […]
第七百九十五夜    「ちょっと、タオルを持ってきてもらえませんか」 と玄関からの外から声が掛かって振り返ると、外回りから戻ってきた営業が扉の前で立ち止まり、首に掛けたタオルで髪や顔を拭きながらこちらを見詰めて […]
第七百九十四夜    立秋を過ぎたばかりの盆休みのはじめ、朝からカメラを持って上野の不忍池へ蓮の花を撮りに向かった。昭和に取り残されたような下町の住宅街からそこまでは自転車で二十分ほど、家を出て陽射しの強さ、空 […]
第七百九十三夜    週末の家事仕事を一通り片付けた土曜、まだ暗く成りきらぬ夕方の終わり際から、配信サービスの映画を観ながら簡単なツマミで酒を飲んでいた。と不意に視界の隅がちらつく。暫く様子をうかがうに、眺める […]
第七百九十二夜    朝日の焼け付く小さなベランダへ洗濯物を干し終わり、気温の上がりきる前に買い出しへ出ようと着替えを始めたところへ、大学時代の後輩から電話が掛かってきた。  在学中から何故かなつかれて、卒業後 […]
第七百九十一夜    高校入学後初めての夏休みも、早二週間が過ぎた。今日からは三泊四日の合宿で、一年は午前中の練習を早抜けして家庭科実習室で食事を準備する。二年生の当番が指示を出しながら簡単な昼食を作るのだが、 […]
第七百九十夜    肌にまとわりつく熱い空気に汗を拭いながら駅に付くと、改札へ向かう階段に人だかりができていた。事故でもあったかと自転車を押しながら送ってきてくれた友人と顔を見合わせていると、駅員の持つ拡声器か […]
第七百八十九夜    商談を終えた取引先からの帰り道、駅前からほんの五分の間に上司ともども汗だくになりながらプラットフォームに付くと、電車を待つ間に、 「商談成立のお祝い」 と言って自動販売機のスポーツ・ドリン […]
第七百八十七夜    梅雨ももうじき空けようという蒸し暑い日の夕方、試験前の勉強会と称して友人二人がやってきた。三人とも上京組で、比較的大学に近く、男三人がノート類を広げて座るスペースが確保できるのが我が家だけ […]
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