第四十六夜 西の空に半月の沈みかける頃になって漸く一仕事を終え、社用車を駐めたコイン・パーキングまで住宅街の路地を歩いている。昼間まではじめじめと蒸し暑かったが、日が暮れたからか、北風でも吹いたのか、いつの間にやら空気は […]
第四十四夜 暗い山道をハイビームで照らしながら車を走らせる。 席がお開きになってから車内で酒が抜けるのを待つうちについ眠ってしまい、日付も変わった頃合いである。今更急いで帰っても細君のお叱りは変わらなかろうから、努めて安 […]
第四十二夜 散歩に出たはいいものの、五月の湿った空気に強い陽光が加わって蒸し暑い。 交差点の向こうに公園らしき茂みを見付けて、どこか腰を下ろせる日陰でもないものかと探しに入ることにする。 幸い入ってすぐ、楠の木の大木の陰 […]
第三十九夜 雨上がりの早朝、雨露を湛えた稲の葉が青々と輝く隙間を縫って走る畦道を、犬に引かれて歩く。 と、犬が一鳴きして綱をひときわ強くグイと引く。 犬の視線の先を見ると、道に敷かれた砂利が盛り上がっている。いや、よくよ […]
第三十夜 安アパートの二階にある自室は五月晴れで蒸し暑く、なかなか寝付かれない。 さっぱりしたものを飲みたくなり、財布を手にサンダルをつっかけて部屋を出る。階段を下ったところにアパートの設置した自販機があるので、鍵の心配 […]
第三十六夜 間もなく列車が到着するとのアナウンスが聞こえ、ホームへ続く階段を急いで上ると、祝日の昼食時で人は疎らであった。 二、三人ごとに固まって列車を待つ列ともいえぬ短い列の、手近かなところに目星をつけて後に付くと、右 […]
第三十五夜 残業に区切りが付いた。鞄を肩に掛けて席を立ち、事務所を消灯して施錠する。共用部分は既に照明が落とされて暗い。エレベータ・ホールでエレベータを待つ。 と、共用廊下の先の灯が気になった。灰皿付きの大きな空気清浄機 […]
第二十九夜 寝付かれずに布団の上で身を捩る。何とは無しに目を開けると、何が光源になっているのか、青く暗い部屋の様子が辛うじて見える程度には明るい。 どきりとした。視線の先で、扉が閉まっていたからだ。寝室の扉は寝る前に必ず […]
第二十五夜 給食を食べながら、一体どんな話の運びだったか、放課後に教室へ集まってコックリさんをしようということになった。 できるだけ雰囲気があったほうが好い。冬の陽の傾く四時半頃、一遊びしても最終下校には間に合うだろう時 […]
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