第八十二夜   トルコ人の友人がケバブの屋台を手伝えと連絡をしてきたのは昨夜のことだった。気温の急変にやられて風邪を引いた相棒の代わりに、接客だけしてくれればというので軽い気持ちで引き受けた。 朝から秋葉原、上 […]
第八十一夜   引っ越しの荷物を積んだ車に乗り込む両親を見送って、弟の手を引きアパートの部屋に戻るのは今日二度目だった。幼い弟は引っ越しにおいては戦力外、と言うよりは寧ろ足手纏であり、私も力仕事の役には立たない […]
第八十夜   深夜の自動改札を抜けて階段を昇ると、まるで人気の無いホームに出た。 普段は最終電車で帰るのだが、その場合ホームはもう少し賑やかだ。今日は少し早めに仕事を切り上げた分まだ数本の電車が残っているはずだ […]
第七十六夜   「いやね、働いてる身としてはサ、実際ただの職場だから」。 わざとらしく眉を顰め、いかにも飽き飽きしているという様子で男が言う。酒の席で彼の職業を初めて聞いた者は必ず、何か不思議な体験をしたことは […]
第七十夜 残暑の厳しい中、秋葉原の電気街で買い物をした。先日の落雷で職場のコンピュータが壊れ、部品の購入を任されたのである。 用事を済ませ一休みしようと公園へ入ると、平日の昼とはいえ妙に人気の無いのが気になる。木陰の長椅 […]
第六十八夜 運動不足を解消するのに、少々高い自転車を買った。道具を用意したのはいいのだが、元来が運動不足になるような出不精だ。単に運動のため出掛けるのが億劫なのは言わずもがなである。そこで一念発起して、休日には手頃な観光 […]
第六十七夜 「で、相談って何です?」 頼んだ料理が揃って乾杯し、グラスのビールを一口呑んで若い男が問う。卓の向かいには高級なスーツに身を包んだ四十絡みの紳士が土気色の顔をしてグラスをあおっている。グイグイとグラスを空け、 […]
  第六十六夜 盆に帰省をしないならと誘われて、日の暮れた頃に酒と肴を持ち寄り酒宴を開くことになった。 友人宅へ着くと、 「遅かったじゃないか」 と出迎える部屋の主の顔は既に赤い。家が遠いのだからと返しながら靴を脱ぎ、酒 […]
第六十五夜 合宿初日に興奮で寝付かれぬ後輩たちにせがまれて、消灯時間を過ぎた中、キャンプ用にロウソクの灯の色を真似たLEDランタンをこっそり囲んでトランプ遊びをすることになった。三年が引退して部内では最上級生になったもの […]
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