第六十五夜

合宿初日に興奮で寝付かれぬ後輩たちにせがまれて、消灯時間を過ぎた中、キャンプ用にロウソクの灯の色を真似たLEDランタンをこっそり囲んでトランプ遊びをすることになった。三年が引退して部内では最上級生になったものだから、面倒見の良いところを見せてやらなければという妙な責任感がある。

最下位になった後輩が負け惜しみを言いながらカードをシャッフルし、次のゲームに必要なカードを配り始めたとき、その右隣の後輩が、
「そういえば、第一理科室でしたっけ?半地下の、あそこで授業を受けたこと無いんですけど……」
と切り出す。

曰く、午後の練習の間ずっとその教室から、坊主頭の生徒がグラウンドで練習する様子を見つめていたと。

何かの文化部が部室として使っていたのではないかと別の後輩が推測を述べるが、そんな部は無いはずだと二年生は揃って否定する。

「あ!」
と、一年生の一人が大きな声を出し、小さな声で済みませんと謝ってから語り始める。
「うちの祖父が、ここの卒業生なんですけど……」

彼の祖父は戦後ベビーブームの世代で、この高校に入学したのは戦争が終わって二十年も経たない頃だったそうだ。
「うちの市って、道路がめちゃくちゃ広いじゃないですか。あれって……」
「空襲があって、焼け野原になったからだろ?」
「ああ、小学校の社会で習った覚えがあるわ」
「うちの家も、道路整備のために何メートルだか敷地を削られたとか……」。

配り終えた手札を手に、皆が口々に言い合う。
「それで、祖父の言うには、この高校は戦時中も同じ建物だったそうなんです。当時は旧制中学って言ってたかな。それで、空襲の被害者があまり多く病院に収めきれないものだから、半地下の教室に遺体を並べて遺族が確認をするのを待ったんだと、年配の先生が……」。

そこまで言うと彼は黙って手札を見つめ、周囲の皆もまた黙ってロウソク色のランタンを囲んでじっと座っていた。

そんな夢を見た。