第百九十五夜   雨の止んだのを見計らい、秋雨続きで溜まった洗濯物を抱えて、アパートから徒歩数分のコイン・ランドリィへ向かう。 人気のない店内に入ると、一人暮らしの一週間分の衣類を洗濯機へ放り込む。洗濯機を回し […]
第百九十四夜   満員の急行列車が駅を通り過ぎようとして、けたたましい金属音と共に急ブレーキを掛けた。と、目の前の座席で先程まで船を漕いでいたセーラ服の少女が、急に体を強張らせて呻き声を上げる。 緊急停止を詫び […]
第百八十六夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百八十二夜   夫が週末に出掛けるというので、いつもより多めの食料を買い込んで車に積んだ。ほんの数キログラムの差だろうが、アクセルもブレーキも若干聞き難いような気がするから不思議なものだ。 大通りを折れて自宅 […]
第百七十九夜   幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。 週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社 […]
第百七十八夜   アルバイト先のカラオケ店へ着くなり、バックヤードで店長から、 「例の部屋、大掃除するから着替えたら来い」 と言われて気が重くなる。 今年の春先から異臭のする部屋があり、利用客から人死が出ている […]
第百五十一夜   残業をしていると、携帯電話に友人から、 「家に帰りたくない」 と連絡が入った。三ヶ月ほど前に挙式したばかりの男の台詞ではない。 「自分にそういう趣味はない」 と返すと、話だけでも聞いてくれと食 […]
第百七十三夜   麻雀に誘われて友人宅へ招かれた。彼のアパートへは初めて訪ねるのだが、スマート・フォンへ送られてきた地図情報のお陰で特に迷うこともない。便利な世の中になったものだ。 酒とツマミの入ったレジ袋を片 […]
第百七十一夜   母に頼まれた街での買い物を終えて実家へ戻る田舎道を走っていると、盆も終わりとなって幾らか涼しくなった風が窓から入って髪を揺らす。都会と違いすれ違う車も少なく、空気も綺麗だ。 走っているうちに、 […]
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