第二百九夜   仕事柄、初売りの三ヶ日は寝食の暇もない。それでも三年目となると要領が掴めているので、大掃除や衣食の用意を前倒しにすることで少しでも本番に余裕を持たせる策を講じられるようになった。 それでも天候の […]
第二百七夜   雪の降る前に、今年最後の山登りをしようと出掛けてドジを踏んだ。斜面を大きく滑落して腰を打ち、谷の小川の岸で身動きが取れない。万一を考えて数日分の食料と寝袋とは用意してあるが、登山道から大きく外れ […]
第二百六夜   明朝の会議で配布する資料を作り終え、手元に印刷した書類をコピー機にセットして給湯室へ向かう。事務所に独り居残るときは暖房を付けずに厚着で誤魔化すのが昔からの癖になっているので、複写を待ちながら冷 […]
第二百四夜   南の出身なもので、冬の日本海側をドライブしたいと安易に思ったのがいけなかった。 嫁の実家へ帰省するのに、手間だからよせと言うのを押し切ってスタッドレスタイヤに履き替えて車で向かうことにしたのだが […]
第二百三夜   祖父に呼ばれて隣県の父の実家に帰った。じきに年末年始の休みだから短いなりに戻れると言っても、急用だからといって聞かない。子供の頃から可愛がられ、父が死んでからはいっそう気を回してくれるものだから […]
第二百一夜   風呂上がりの濡れた頭を拭きながら暗い廊下を歩いていると、年末年始の休みに帰省して来た兄の部屋の扉の隙間から光が漏れていた。父と二人して酔いつぶれたのを母と二人で運んでやったのだが目を覚ましたのだ […]
第二百夜   家路に吹く風の予想外な冷たさに、遅い夕食を確保しに立ち寄った深夜営業のスーパーで葉物と鶏肉を買わされた。 簡単に煮込みうどんにでもして暖を取ろう。 そんな夕餉への期待を頼りに人気のない寒空の下を歩 […]
第百九十八夜   解体業者の友人に頼まれ、県外の古い平屋へバンを駆ってやって来た。 間の悪いことに若い作業員が骨を折ったり、親戚に不幸があったりで都合が付かず、手伝いを頼まれたのだ。 その代わり、所有者の残して […]
第百九十六夜   娘達二人の七五三の写真が仕上がったと言う連絡とともに、近所の写真館から光学ディスクが送られてきた。きれいに製本した小さなアルバムを作るサービスを利用したのだが、実際に仕上がるまでのツナギにデジ […]
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