第百九十六夜

 

娘達二人の七五三の写真が仕上がったと言う連絡とともに、近所の写真館から光学ディスクが送られてきた。きれいに製本した小さなアルバムを作るサービスを利用したのだが、実際に仕上がるまでのツナギにデジタル・データを寄越したとのことだ。

早速妻と並んで互いの両親へ送る写真を選別しようとするが、そこは流石にプロが選んで寄越したものだけあって、どれも甲乙つけ難い。

数枚ならば電子メールで送るつもりだったのだが、選別を諦めた結果、送るデータが大き過ぎてメールでは不適当だろうということになる。

仕事ならば大きなファイルをやり取りするためのサービスも使うが、義両親はともかく私の母は機械に疎い。結局送られてきた光学メディアをそのまま複製し、折れないよう注意して包装した上で郵送することに決める。

ハード・ディスク・ドライブが安くなって久しく、
「空のメディアなんてあったかしら」
と妻の記憶が不確かなのも無理はない。二人で棚を探してみると、ほどなく十枚入りの箱に五枚ほど、個別に包装されたままの新品のディスクが残っているのが見つかる。いつ、どんな目的で用意したものかさっぱりで、
「君が買ったものかい?」
と妻に尋ねても、いいえ、貴方が買ったのでしょうと言う。

二人で首を首を傾げつつ、実家へ送るようが足せるのだからまあ良かろうと、データを書き込むためにドライブを開け、封を解いたばかりのディスクを入れる。

風を切るようなディスクの回転音の後、
「自動再生しますか?」
の文字が現れる。新品の、つまりデータの入っていないメディアを挿入して、こんな表示が出るのは初めてだ。

気味が悪いと言いながら、妻が別のメディアの封を解いて交換すると、今度はなんのメッセージも出ないまま、すんなりとデータの書き込みが実行できる。書き込み終わるのを待ちながら、手持ち無沙汰に先程のディスクを手にとって、
「このディスク、再生したら何が起きたのかな。音声か、それとも動画か……」
というと妻は目を伏せて首を振り、
「塩でも振って、明日のゴミに捨てておくわ」
と、私の手からディスクを取り上げて、台所へ向かった。

そんな夢を見た。

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