第二百九夜

 

仕事柄、初売りの三ヶ日は寝食の暇もない。それでも三年目となると要領が掴めているので、大掃除や衣食の用意を前倒しにすることで少しでも本番に余裕を持たせる策を講じられるようになった。
それでも天候の悪いのには勝てず、連日の雨模様に後回しになった洗濯物が溜まってしまっていた。
カレーを煮込む圧力鍋を火から下ろし蓋をして、すっかり暗くなった戸外へ大量の洗濯物を持って出る。公園を挟んだ向かいの通りに小奇麗なコイン・ランドリィがあって、梅雨時にはしばしば乾燥機のお世話になっている。

家を出て通りを渡ると、公園のマラソン・コースを横切り、枯れた芝生を踏みながら遊具の横を歩く。年末だからか、ジョギングをする人の姿は無く、冬の澄んだ空気が冷たく頬に刺さる。

公園の半ばに差し掛かったところで、ザーザーとホワイト・ノイズが聞こえてくる。自然と音の出どころへ視線をやると、公園内の電灯の支柱の脇に背の高い男が立ち、無表情な目と大きく開けた口をこちらに向け、
「ザーーーーーーーー」
という音を発している。

そうとわかった瞬間に駆け出してコイン・ランドリィの前に着き、とても独りでここには居られないと思い、公園を迂回して自宅に戻ることにした。

そんな夢を見た。