第二百五十九夜   目を覚ますと下腹に、痛みに近い尿意を覚えた。 寝る前に用は済ませたのだが、こればかりは仕方がない。小学生の中学年頃から数日に一度はこうして尿意で目を覚ますようになってもう数年経つ。 睡魔の押 […]
第二百五十七夜   土曜の夕方、ゼミの先輩のアパートに男六人が酒とツマミを持って集まった。 雷と窓を叩く雨音を聞きながら麻雀を打ち続け、気付くと雨が小康状態になっている。テレビのニュースが引き続き雷雲の西から湧 […]
第二百五十五夜   シュ……シュ……シュ 背後の荷台から断続的に、何かの擦れるような、或いは空気の漏れるような音が聞こえた。 「固定が甘かったんですかね。一度見てみましょうか」 と運転席を見ると、酒焼けした声が […]
第二百五十四夜   出張から返ってきた夫が息子に飛行機の模型を渡すと、彼は早速居間のソファで箱を開け、夢中で組み立て始めた。 それを横目に寝室へ向かい、背広を脱いでクローゼットに掛けた夫が、 「そういえば、行き […]
第百八十一夜   顧問の先生が 「全員が終わったら、部長は報告に来い。そのまま解散でいい」 と言って姿が見えなくなるとすぐ、出されたメニュの半分も終わらないうちに投げ出した先輩の一人が、 「なあ、お前らは幽霊っ […]
第二百五十二夜   早朝まだ薄暗い中、駅前の大きな公園で噴水前の広場で軽く準備運動をする。 冬に走り始めてこれまで続いているのは、周りが暗い中を走ると妙に心の落ち着くからだった。だんだんと日の出が早くなるのに合 […]
第二百四十八夜   窓外で手を振る二人が見えなくなると、鞄から英単語帳を取り出す。自宅の最寄りまではあと二駅しか無いが、山奥へ向かうに連れて駅の間は広くなる。一駅十分、二十分ほどは明日の小テスト対策が出来る。物 […]
第二百四十七夜   どうぞと促され、管理人の引き開けたガラス戸を潜ると、古い木板と僅かなカビの臭いが鼻に付く。その匂いは不快というより寧ろ、 「懐かしい臭いですね。僕が通ったのは、こんな立派な木造の校舎ではあり […]
第二百四十三夜   突然、ブツリと電話が切れた。 大型連休を目前に控えた夜、大学の友人の一人から数年ぶりに掛かってきた電話だった。連休中に暇ならば久しぶりに会って酒でも飲もうと、スマート・フォンを肩と耳とで挟み […]
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