第二百八十三夜   行きつけのスポーツ・バーのカウンタで、 「へぇ、気のせいだと思うけどねぇ」 と愛想笑いを浮かべて、それが苦笑いにならぬうちにグラスのジン・ライムに口を付ける。隣に座る友人が、リサクル・ショッ […]
第二百八十二夜   夜勤明けの怠い身体をがら空きの下り電車に揺られてつい舟を漕いでいると、いつの間にか最寄り駅で車両の扉が開いていた。 閉じる扉に半ば挟まれながら慌ててホームへ出ると湿った熱気が全身を覆い、直ぐ […]
第二百八十一夜   休日の午前十時、高校の最寄り駅への到着を知らせるアナウンスを聞いて座席を立つ。 毎日の登下校もこれくらいゆったりとした車内ならどれほどいいかと思いながら開いたドアをくぐると、残暑の熱気が顔に […]
第二百八十夜   ホームルームが終わると、皆が椅子を机に乗せ、教室の後部に寄せて床を広く開けた。見晴らしが良くなったと思う間もなく、そこへ段ボールや模造紙、絵の具が広げられ、ガヤガヤと思い思いにお喋りをしながら […]
第二百七十五夜/h3>   盆休みが開けた初日の水泳教室で指導を終えてシャワを浴びていたところへ、プールからほど近い校門の辺りから子供達の叫び声が聞こえてきた。 水を止めてタオルを掴み、大急ぎでそちらへ向 […]
第二百七十四夜   半年ぶりに母と二人並んで夕飯の食器類を片付け終え、マグカップを片手に廊下へ出て居間へ向かう。 避難勧告も出ていないとは言え、横殴りの雨の雨戸を叩く音は聞いていて心地の良いものではない。台風の […]
第二百七十三夜   久々に両親を喜ばせてやろうと、盆に帰郷する旨を連絡したのが却って気を遣わせることになった。最寄り駅のロータリィへ車で迎えに来ると父が言い出した。大した距離でもないからと言っても聞かないので、 […]
第二百七十二夜   質の良いものが多少売れてしまうのは諦めて、陽が傾いてから家を出て買い物に向かったが、皆考えることは同じなのか棚の商品は時間の割に減っていなかった。 数日分の野菜や魚を買い込んで店を出ると西の […]
第二百七十夜   合宿一日目は怒涛のうちに夜になった。 早朝に集合した後、倉庫から非常時用の薄い敷布団を屋上へ運び出して干し、家庭科室で昼食を作りながら器具の扱いやゴミの処理など衛生管理の説明を受けた。午前の練 […]
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