第三百五夜   気が付くと、青白い蛍光灯の光る白い部屋に仰向けに寝かされていた。 腕には点滴の針が刺さり、ズボンのベルトとボタンとは外されており、顎を引いて体を見ると、初めて見る灰色のトレーナを着せられている。 […]
第三百四夜   昼の休憩時間になって、同じ部署の数人で連れ立って近所の定食屋に入った。 水を貰って一同メニュを眺めていると、唯一の後輩が紙ナプキンにボールペンで何やら文字を書き、 「文字は見ないで置いて下さい」 […]
第三百二夜   給食を終え、窓辺の席でうとうとと舟を漕ぎながら日光浴を楽しんでいると、 「ヤバい、ヤバい」 と連呼しながら幼馴染が駆け寄ってきた。 幼馴染といっても、家が同じマンション内の近くの部屋で、お互いが […]
第三百一夜   名刺を交換し、席を勧められて腰を下ろすと、 「ひょっとして、あの○○さんの妹さんですか」 と、取引相手の男性から驚きの声が上がった。「○○」は私の姓であり、この地域に限らず珍しいものだから、同姓 […]
第二百九十九夜   こんなに小中学時代の同学年の皆が集まったのは何年ぶりだろう。互いにちらちらと顔を見合い、当然目が合うのだがその度に、 「今は忙しいからまた落ち着いたらね」 というようなアイ・コンタクトをして […]
第二百九十八夜   文化部の同級生数人で、中間試験を終えた開放感を味わいながら駅前の大通りまで歩いていた。テスト前二週間の部活動停止期間がようやく開けて、その間に積もった他愛もない話をするために歩調を緩めて歩い […]
第二百九十七夜   文化部の同級生数人で、中間試験を終えた開放感を味わいながら駅前の大通りまで歩いていた。テスト前二週間の部活動停止期間がようやく開けて、その間に積もった他愛もない話をするために歩調を緩めて歩い […]
第二百九十五夜   娘の出し物が終わると、次の種目まですっかり暇になってしまった。妻は一度自宅に戻って昼食の弁当の準備をするからと言って帰宅し、手伝おうかと提案したものの、普段から碌に料理をしてこなかった実績に […]
第二百九十四夜   バイトを終え、バックヤードで着替えていると携帯電話が鳴った。大学の友人の名前を確認し、イヤホンを耳へ刺して通話開始のボタンを押すと、何度も電話をしたのに何故出なかったと苦情が耳に飛び込んでく […]
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