第二百八十九夜   そろそろ日付が変わる頃合いに、レジスタをアルバイト仲間に任せ、バック・ヤードから明日発売の雑誌を運び出すことにする。 どこのコンビニエンス・ストアでも同じというわけではないかもしれないが、駅 […]
第二百八十八夜   夕食に間に合うよう、陽の傾いた頃に友人と別れて帰路についたが、電車の中の人々も、マンションの共用玄関の自動扉も、やはり私が見えないらしかった。人とぶつからぬよう、自転車や自動車に轢かれぬよう […]
第二百八十七夜   友人の声に顔を上げ、本を閉じてベンチを立つ。雑貨屋や服屋を見て回るつもりで待ち合わせをしていたのだが、予定より十分早く着いてから三十分も待たされた。 寝坊でもしたかと尋ねると、彼女は私の横を […]
第二百八十六夜   打ち合わせを終えて外に出ると、低い雲が垂れ込めて辺りは既に薄暗くなっていた。秋の陽は釣瓶落としとはこのことか。 一雨来る前にと急いで事務所へ戻ると、独り留守番を任せていた事務員の女の子が青ざ […]
第二百八十四夜   やや肌寒く湿った空気は木々と土の香りがして心地よい。時折輝く灯り以外は本当に真っ暗闇の中、太腿を軋ませながらペダルを漕ぐ。 自転車が先かカメラが先か、趣味が昂じて連休には夜通し走って海や山を […]
第二百八十三夜   行きつけのスポーツ・バーのカウンタで、 「へぇ、気のせいだと思うけどねぇ」 と愛想笑いを浮かべて、それが苦笑いにならぬうちにグラスのジン・ライムに口を付ける。隣に座る友人が、リサクル・ショッ […]
第二百八十二夜   夜勤明けの怠い身体をがら空きの下り電車に揺られてつい舟を漕いでいると、いつの間にか最寄り駅で車両の扉が開いていた。 閉じる扉に半ば挟まれながら慌ててホームへ出ると湿った熱気が全身を覆い、直ぐ […]
第二百八十一夜   休日の午前十時、高校の最寄り駅への到着を知らせるアナウンスを聞いて座席を立つ。 毎日の登下校もこれくらいゆったりとした車内ならどれほどいいかと思いながら開いたドアをくぐると、残暑の熱気が顔に […]
第二百八十夜   ホームルームが終わると、皆が椅子を机に乗せ、教室の後部に寄せて床を広く開けた。見晴らしが良くなったと思う間もなく、そこへ段ボールや模造紙、絵の具が広げられ、ガヤガヤと思い思いにお喋りをしながら […]
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