第三百四夜

 

昼の休憩時間になって、同じ部署の数人で連れ立って近所の定食屋に入った。

水を貰って一同メニュを眺めていると、唯一の後輩が紙ナプキンにボールペンで何やら文字を書き、
「文字は見ないで置いて下さい」
と、それを配る。何のことかと訊ねても、
「まあまあ、後でのお楽しみです」
とにこにこしているので、よくわからないながらも放っておいて、各々の注文を済ませる。

看板娘のオバちゃんが席を離れると、後輩は私に、
「何を頼みましたっけ?」
と嬉しそうに首を傾げる。不審に思いつつも素直に、
「おろしハンバーグ定食」
と答えると、先程の紙ナプキンを捲ってみろというので裏返すと、そこには彼女のいつもの丸文字で、紛れもなくおろしハンバーグと書いてあり、思わず感嘆の声が漏れる。続いて紙ナプキンを覗き込んでそれを確認した同僚達からも同様の声が漏れ、それぞれ自分に渡された紙ナプキンを捲くっては、
「あってる、あってる」
「どんなタネがあるのか」
「いつも決まったものを頼むとか、曜日で頼むものが決まっているとか、無いと思うけど」
などとと大の大人がはしゃぎ合う。

種明かしを求められると後輩は、
「実は、予知夢というか、正夢というか、そういうものを見るんです」
と少し困ったような笑みを浮かべる。

詳しく説明を求めると、彼女は時折、妙に現実味のある夢を見るのだそうだ。そういうときは、その日のうちにその夢と同じ場面が訪れる。ただし、アイスの当りが出たり、有名人の訃報が流れたりといった、
「どうでもいいことしかわからないんですけどね」
と、ケラケラと笑った。

そんな夢を見た。