第百八十一夜   昼食を終えると自転車に飛び乗り、友人宅を数件回って市営プールへと向かった。泳げない者に指導をするという名目で、最も暑い時間帯を水辺で涼もうという算段だ。まだ正午を過ぎて間もないが、頭の真上から […]
第二百六十八夜   朝、気温の高くなる前に仕事を済ませてしまおうと、春野菜の収穫を終えた畑に秋蕎麦の種を蒔いていた。朝飯時には仕事も終わり、荷物を纏めて帰り支度をしていると、畦道を水色の軽自動車が一台こちらへ駆 […]
第二百六十七夜   腕を怪我した友人に頼まれて、臨時に酒の配送を手伝うことになった。彼を助手席に乗せて指示に従って運転し、彼の御用聞きをしている間に荷運びをする。 初め運転を任せては効率が悪いから彼がやると言っ […]
第二百六十六夜   夜勤明けのそろそろ眠たい頭でコインランドリィから部屋に返ってくると、生暖かい空気がじっとりと出迎えてくれる。湿度はさほど外と変わらないのに、不思議と温度は籠もる。 かといって冬場は何処からと […]
第二百六十五夜   社長が事故で急死したとの報せが入り、午後の社内が普段にも増して慌ただしくなった。 役職付きは今日のうちに通夜があるかもしれないからとのことで、下に関係先への連絡を指示し、喪服や数珠を何処に仕 […]
第二百六十四夜   ジョギングを始めて半年経ち、正月の初売りで買ったジョギング・シューズも随分とすり減った。そろそろ新しい靴を下ろそうかとも思うのだが、雨で走れぬ日、走れても足元の悪い日が続いてなかなか踏ん切り […]
第二百六十二夜   露天風呂を堪能して部屋へ戻る途中、すれ違った仲居に地ビールを頼んだ。 汗をかいて火照った体に冷えたビールをと考えるだけで頬が緩む。出張で年中あちこち飛び回っているうちに、楽しみといえば酒ばか […]
第二百六十一夜   締め切った雨戸を打つ雨粒の音を聞きながら、普段呑まぬ芋焼酎を片手に普段見ない古い邦画を眺めていた。 母方の祖父母が週末を旅行して家を空けるので、その留守番役として白羽の矢が立ったのだ。いつ建 […]
第百八十一夜   トイレから戻ってきた年配の上司が、手術前の外科医のように胸の前に両手を上げながら、椅子の背もたれに掛けた上着のポケットからハンカチを出してくれと言う。 中腰になって向かいの席に手を伸ばし失礼し […]
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