第二百六十一夜

 

締め切った雨戸を打つ雨粒の音を聞きながら、普段呑まぬ芋焼酎を片手に普段見ない古い邦画を眺めていた。

母方の祖父母が週末を旅行して家を空けるので、その留守番役として白羽の矢が立ったのだ。いつ建ったのかわからない田舎の大きな平屋は確かに不用心で、多少の小遣いも出ると言われて仕方なく、金曜の晩に車を飛ばして泊まり込み、月曜の早朝にまた戻る算段だ。

就職して以来しばらく孝行らしいこともしてこなかったから、これくらいのことならと引き受けたものの、蓋を開けてみれば警報が出るほどの大雨続きで、こんな天気では泥棒の方も流石に仕事を控えるのではないかと思いながら、雨の小降りになるのを見計らって食料を買い出しに行く他は、ちびちびと祖父の許した酒を舐めながら退屈に過ごしている。

すっかり酔った頭に眠気が回って、そろそろ寝ようか、しかし残り三十分ほどの映画は最後まで見てしまおうかと悩む。リモート・コントローラを手に取って再生を一時中断し、一先ず尿意を解決することにして席を立ち、襖を引いて廊下に出る。

深い軒のある玄関の硝子戸を叩く雨音に驚いて思わず顔を向けると、外の灯りに薄く照らされた玄関で、アクリル・ケースに収められた赤い着物の日本人形と目が合う。祖父が骨董趣味で集めたものの一つで、昔から玄関で客を迎えるのが仕事だった。子供の頃にはずっと、日本人形独特の薄気味の悪さを感じていたものだ。

床の間と台所の脇を抜けると突き当たりが風呂だ。その右手の便所の戸を開け、用を足しながら、ふと思う。

あの人形は客を迎えるために、玄関の方に顔を向けて置かれていたのではなかったか。いやきっと、外から入る灯りの都合でこちらを向いているように見えたのだろう。

もう少し酒とツマミを用意して、映画ももう一本くらいは見ようかと思い直しながら便所の水を流すと、便所の窓が白く光り、生木を裂くような轟音がそれに続いた。

そんな夢を見た。