第四百六夜   日帰りの撮影旅行から帰宅すると直ぐに、記憶媒体に一杯になったデータを全て選択してデスクトップ・パソコンのハードディスクへ移すよう命令すると、ややあって作業中のファイルを提示するウィンドウに、残り […]
第四百五夜   目を覚ますと周囲が青白く、消毒薬の匂いに満ちていた。眠い頭で暫く考えて、自分が入院中だと思い出す。 学校から帰宅して直ぐに急な腹痛に襲われて医者に担ぎ込まれ、虫垂炎、いわゆるモーチョーだと診断さ […]
第四百一夜   語学の授業で同級の、線の細く整った顔立ちの割に地味というか陰のある女子に気を惹かれていた。授業の終わりに声を掛け、学食で昼食でも一緒にどうかと尋ねると、やんわりと断られるが、こういうものは一度で […]
第四百夜   病室で亡くなった患者さんの清拭が終わり、ベッドからストレッチャへ載せて病室を出る。遺体の搬送業者が来るまで、一時的に霊安室へ移っていただかなければならない。 ご高齢の奥様は付きっきりの看病続きであ […]
第三百九十九夜   夕食を終えて一段落付き、便所に立って外が静かなのに気が付いた。 降り続いた秋雨が止んだのだとわかり、居間に戻って妻に数日ぶりのジョギングに出ると宣言する。足元も悪いのにとやんわり止められるが […]
第三百九十六夜   週の殆どを在宅勤務で過ごしていて、隣家、といってもアパートの隣室なのだが、最近少々気になることがある。 平日の四時半頃になると、小学校高学年の姉が、弟を連れて帰ってくる。数日前に隣室の父親と […]
第三百九十五夜   政府が旅行業者への支援策を打ち出したことから、例年なら貧乏学生のサークル合宿でなどとても手の出ないような宿を格安で借りられるとの情報が周ってきて、有志というか、遊びに回せるお金に余裕のある者 […]
第三百九十四夜   「いないわよ、そんなもの」 と、スピーカから聞こえる母の声には、ただ藪から棒に訳の分からぬことを訪ねてきた娘の真意を測りかねるという戸惑いの色だけが浮かんでおり、隠し事をしていた後ろめたさだ […]
第三百九十三夜   「おい、兄ちゃん」 と肩を揺さぶられて目が覚めた。寝袋の中は軽く寝汗をかく程度に暖かだが、外に出ている顔に当たる風は随分冷たい。その冷たい顔を、よく陽に焼けた人の好さそうな老爺と黒い柴犬が覗 […]
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