第四百六夜

 

日帰りの撮影旅行から帰宅すると直ぐに、記憶媒体に一杯になったデータを全て選択してデスクトップ・パソコンのハードディスクへ移すよう命令すると、ややあって作業中のファイルを提示するウィンドウに、残り十数分間の作業時間が必要と報告する文字列が表示される。

技術の進歩で転送速度も随分と向上した一方で記憶容量の拡大も著しく、この手の作業は相変わらず時間が掛かる。こんなごく小さなカード一枚に、ギガバイト単位のデータを保存できるというのだから、凄い時代になったものだ。

仕事の終わるまで放っておくことにして、土産に買ってきたレトルトの名産品を鍋に張った湯に入れ、地酒とグラスを用意する。写真の選別と加工をしながら、写真に写った地域の酒を舐めるのが最高のひとときなのだ。

梅肉に鰹節を混ぜて練り、塩で揉んだキュウリを切って皿に盛る。その間に十分に温まったパッケージを取り出して中身を小皿に移し、パソコンの前へ配置して、至福の時間が始まる。

ひとまず記憶媒体の中身を削除するよう命令を出し、作業の表示が出ている間にグラスへ酒を注ぐと、見慣れないウィンドウが開いて警告文を出している。
――このファイルは他のプログラムで使用されているため削除できません。
そんなはずはない。パソコンを起動してから真っ先にファイルのコピーを命令し、他の操作はしていない。それが終わったのもしっかりと確認してから削除の命令を出した。

ひとまずキャンセルのボタンを押して確認すると、一つだけ消えずに残った写真のデータ・ファイルがある。

不審に思いつつそれを選択し、試しにダブル・クリックして開いてみると、これは正常にアクセスできるらしい。ただ真っ黒というか真っ暗と言うか、何も映らずに黒いだけの写真が表示される。レンズ・キャップを取らぬままシャッタを切った覚えはないが、何かの拍子にボタンに触れるくらいのことはあるだろう。

その画面を閉じた上で改めて削除を命令してみる。が、間を置かずに先と同じ警告画面が出る。カードの読み書きにエラーがでたのだろうかとも思うが、こういうエラーの起き方は記憶にない。試しに、パソコン内の適当なファイルをカードへコピーさせると、何の問題もなく処理される。それを削除するのも同様だ。
一度読み込みを停止して取り出してみるかと思うが、これもやはり「使用中」と出て取り外しを許可してくれない。
壊れたのなら仕方がない。諦め半分、開き直り半分でカード・リーダのプラグを引き抜き、差し込み直してみる。
一瞬間をおいて、接続されたカードの中のファイル一覧が自動的に表示されると、そこには相変わらず先程のファイルだけが表示される。
何やらすっきりしないものの、パソコンを立ち上げ直すのも億劫で、キュウリで梅肉を救って一口齧り、よく取れた写真の選別作業に取り掛かることにした。

そんな夢を見た。