第四百二十六夜   一月も下旬になり、入試まであと僅かとなったある日、仲の良い友人に誘われてこっそり小遣いを持って登校した。買い食いをしようというのではない。学校近くの天神様へ、学業成就の御守を頂きに行こうと言 […]
第四百二十三夜   早朝、自転車に乗って川沿いの道に出ると、周囲から一段下がった川に向かって滑り降りてくる冷気が溜まるのだろう、一段と冷たい空気が制服の袖や襟元から吹き込んで来た。 疫病騒ぎで体育館での体育や部 […]
第四百二十二夜   仕事初めから間もなく、再び不要不急の外出を避けるようにお達しが出た。 幸いにも夫婦揃ってテレ・ワークで済む仕事をしているからたまの買い物以外に外出の必要はないのだが、通勤の際の最低限の運動さ […]
第四百二十一夜   隣に若い夫婦が越してきて一年が経った。 定年退職した上に外出自粛とあって、屋内でもできる趣味にと将棋を始めたのだが、昼食を終えて腹のこなれた頃合いに将棋盤を引っ張り出すと、平日はほとんど毎日 […]
第四百十九夜   正月だからといって特にすることもなく、かといって出掛けるのも憚られ、本棚に並んだ本を適当に手に取っては目を通して過ごしている。 元々目の早い質で、しかも一度は読んだことのある本ばかりだから、中 […]
第四百十五夜   一週間分の食料を買い込んで、両肩に大きな買い物袋を掛けてマンションの共用玄関のガラス戸を潜り、重い荷物がずり落ちぬよう気を遣いながらオートロックを開ける。 エレベータ・ホールには、運悪く二台の […]
第四百十四夜   不意のトラブルに対処するために帰宅が遅れ、久し振りに最終間近の電車で最寄り駅へ到着した。 軽食を摂る暇もなく、クリームと砂糖を入れた珈琲で誤魔化していた腹に何を入れるか考えながら、すっかり人出 […]
第四百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、大手町の首塚が壊されて、早速、祟り?かなんかの地震が起きたんだって?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値 […]
第四百九夜   始業前、コートを脱ぎ給湯室へ行こうとすると、既に席についていた上司が、 「申し訳ないけれど、私の分もお願いしていい?」 と、こちらにひらひらと右手を振りながら声を掛けてきた。 珍しいこともあるも […]
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