第四百七十六夜   終業式の朝、いつもの時刻にいつもよりずっと軽いランドセルを背負って家を出た。 学校は自宅から駅とは反対方向で、同じ路地に同年代の子が住んでいないから、交差点に出るまでは駅へ向かう大人達とすれ […]
第四百七十五夜   学校の補修から帰宅して直ぐ洗濯機に水を張り、脱いだ衣類を放り込んでそのまま浴室に入った。夏に外を歩くと散歩程度でもシャツを絞れるくらい汗を掻くもので、着替えぬまま過ごしていると生乾きの匂いに […]
第四百七十三夜   知り合いの勤める中古車販売店へ、手頃な車がないかと連絡を入れると、幾つか勉強できるものがあるというので買い物前に訪ねてみた。 乗っている車のバッテリにガタが来て、交換と言ってもそれなりの金額 […]
第四百七十二夜   高校から帰宅して玄関の引き戸を開けると、どこかからチリチリと、とぎれとぎれに何かの金属音が聞こえた。 不審に思いつつも靴を脱ぎ、玄関のすぐ脇の階段で自室のある二階へ上ると、それは弟の部屋の戸 […]
第四百七十一夜   強制的に始まったOSのアップデートが終わり、漸く仕事に取り掛かれると安心して珈琲を淹れに席を立った。 全く身に覚えはないが、何かの拍子で自動アップデートを許可してしまったのだろう。仕事を始め […]
第四百七十夜   「ほいこれ、今日中に回ってね」 と笑顔の社長が差し出した紙袋には、A3のバインダが一つと大量の線香の束、日本酒のガラス・カップ十数本、そして商売繁盛で有名な神社の御札が入っていた。 最後に社用 […]
第四百六十九夜   従業員に発熱した者が出て人手が足らぬからと急遽系列店へ呼び出され、勝手の違いに多少戸惑いつつも仕事をこなし、一息吐くともうとうに日付が変わり、草木も眠る頃となっていた。 労いの缶珈琲を受け取 […]
第四百六十七夜   仕事帰りに立ち寄った駅前のスーパーを出て、住宅地へ続く道を数分歩くともう人気は殆ど無くなり、静かに湿った夜道がLEDの街灯をぬらりと反射しているばかりとなった。 これだけ交通量の無い中ならと […]
第四百六十六夜   御茶ノ水の病院からの帰途、橋から見下ろすホームに人が犇めき合っているのが見えた。改札前も黒山の人だかりで、拡声器のアナウンスで漸く、人身事故で電車が止まっていると知れた。 友人の見舞いだった […]
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