第五百五夜   隣の盆地へ呼ばれた仕事の帰り、黄昏時の山中を車で走っていると霧が出た。この辺りではよくあることとフォグ・ランプを付け速度を落として走っていると、見る間に霧が濃くなる。ボンネットの半ばから先すら見 […]
第五百三夜   このところすっかり鈍った足腰を鍛えるべく、朝起きして久し振りに手入れをした自転車で近所を走ることにした。その程度で何の鍛錬になるかと思われそうだが、この辺りは谷の付く地名に恥じることのない起伏に […]
第五百二夜   仕事帰りに買ってきたビールをグラスに注ぎ、焼き鳥を串から外して皿に並べて晩酌の準備が完了した。 ナントカ宣言だかが久し振りに解除されたので外で飲もうと思えばそれが出来ないわけではない。が、今日は […]
第五百一夜   帰宅して玄関の戸を開けると、一瞬遅れて灯りが点く。下駄箱の前に置いたゴミ箱に外したマスクを捨てて靴を脱ぎ、上着を土間の壁のフックに掛ける。上がり框を上がってそのまま流しと風呂・トイレとに挟まれた […]
第五百夜   酒類の提供が解禁され、友人と久し振りに共通の好物である沖縄料理を食べに出掛けた。 自宅でレシピを真似ても何故か再現出来なかった懐かしいあれこれの風味に舌鼓を打つうち、まだ夜も浅いのにラスト・オーダ […]
第四百九十九夜   腹も熟れてきた昼下がり、散歩がてら少し大きな公園まで歩き、秋らしい植物でも写真に収めようかと家を出た。 もう十月だというのに、よく晴れて気温が高い。真夏に比べれば数度気温も湿度も低く過ごしや […]
第四百九十八夜   提出課題を終えたご褒美にアイスでも買おうかと近所のコンビニエンス・ストアへ向かうと、既に町は薄紫色に包まれていた。秋分を過ぎてすっかり陽の落ちるのが早くなったものだ。 コンビニの中で包装を破 […]
第四百九十五夜   組み上がったPCに古いハードディスクを接続して起動すると、認識は無事成功した。依頼主の部下に内容を確認するように言うと、彼女は礼の言葉と共にカップ入りアイスを出して労ってくれる。 椅子を交代 […]
第四百九十四夜   ワクチンを打った日の深夜、熱帯夜と発熱に浮かされて寝付かれず、口に出来るものも底を突いた。喉は渇き、食欲は一切無いが体内のエネルギが足りぬ気配だけは切実に感じる。仕方がない、汗でぐっしょり濡 […]
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