第四百九十九夜

 

腹も熟れてきた昼下がり、散歩がてら少し大きな公園まで歩き、秋らしい植物でも写真に収めようかと家を出た。

もう十月だというのに、よく晴れて気温が高い。真夏に比べれば数度気温も湿度も低く過ごしやすいが、マスクの中は群れて息苦しい。

大通りに出ると、真っ直ぐ続くアスファルトの遠くに逃げ水が見えた。熱せられた空気の密度の差で光が屈折し、本来そこに見えるはずのないものがゆらゆらと見える現象で、こんな時期でも見えるものかと少々驚く。

夏の盛り頃には雨降り続きで草木を腐らせたかと思えば秋に入るとぴたりと止んで、道の脇に植えられたきり碌に世話をしてもらえぬ様子のハナミズキやツツジの葉はもう随分と乾いている。ここらで一雨欲しかろうが、朝に見た週間天気予報に傘の印は見当たらなかったように思う。

そんなことを考えながら、追いつかれぬ逃げ水を追って歩道を歩いていると、足元でピチャリと水音がし、ウォーキング用に通気性の良い靴を通り抜け、靴下へ水の染み込む感触が伝わってくる。

我ながら子供じみた失敗をしたものだと思いながら跳ね退いて足元を見ると、水溜りなど何処にも無い。
――そんな馬鹿な。
突然軽やかなステップを踏んだかと思えば地面をきょろきょろと見回す中年男を訝しげに、目を合わせぬように二人組の若者が通り過ぎる。薄い水色の運動靴の中で、濡れた靴下に包まれた趾を動かすと、爪先辺りが濃い青色に見えるのが光の加減による勘違いでないことが判然と見て取れた。

そんな夢を見た。