第五百二夜

 

仕事帰りに買ってきたビールをグラスに注ぎ、焼き鳥を串から外して皿に並べて晩酌の準備が完了した。

ナントカ宣言だかが久し振りに解除されたので外で飲もうと思えばそれが出来ないわけではない。が、今日はつい癖で持ち帰りを頼んでしまった。

誰に気兼ねすることもなく、風呂上がりのだらしない恰好のまま、好きな姿勢で好きなスポーツを見ながら飲めるのだから、多少ゴミが増えるくらいはどうということはない。

贔屓の試合を眺めながらちびちびとやっているうちに、鶏のほうが冷めてきた。
――一度、電子レンジで温め直そう。
そう思って皿の中央に箸で取りを掻き寄せると、バキと湿った音を立てて箸が折れた。
――そんなバカな。

これまで幾つも鶏を摘み上げた、いやそもそも串に着いた鶏を結構な力で外して何の問題もなかったその箸が、ちょっと鶏肉を押しただけで折れる筈がない。

そうは思うがしかし、現に折れているものは折れているのだからどうしようもない。皿をレンジに入れるついでに折れた箸を濯いでゴミ箱に捨て、予備の箸を取り出す。

レンジの中で回る鶏を見ながら何か嫌な予感がして、スマート・フォンから久し振りに親父へ電話を掛ける。

直ぐに電話に出た親父は贔屓の不甲斐無い試合運びに大層ご立腹の様子で監督の采配に文句を垂れる。誰かに不幸があったのではというのは杞憂であったらしい。

この調子なら次の正月には久し振りに帰るからと伝えて電話を切り、また冷えた鶏を温め直すようスイッチを入れ直した。

そんな夢を見た。