第六百十一夜   秋晴れの日曜の午後、スリッパを履いてゴルフの中継を聞き流しているのは駅前の鍼灸院の待合室だった。 眼精疲労か運動不足か、はたまた季節の変わり目か、ここのところ肩凝りが酷くて堪らないのだと先日部 […]
第六百十夜   マグカップに手を伸ばしながらモニタの時計に目をやるともうそろそろ昼休みという頃合いに、半休の連絡があったという上司が出勤してきた。振り向いて朝の挨拶を疑問形で投げかけると、しかし彼は土色の顔で生 […]
第六百九夜   冷たく乾いた風によく晴れた日差しの暖かさを感じながら洗濯物を干していると、居間のテーブルの上でスマート・フォンが着信音を鳴らし始めた。 物干し竿へ最後のシャツを掛け終えて急いで部屋に戻ると職場の […]
第六百八夜   偶には外で食事でもしようと約束し、仕事帰りの彼女を待つ間、珈琲でも飲んで時間を潰すことにした。食事といってもこちらは休日で店も堅苦しい高級店ではないから、ジム帰りの普段着姿だ。 駅構内のチェーン […]
第六百七夜   道路脇の崖沿いに作られた小さな休憩所兼展望台の木製のベンチへ倒れ込み、手足を大の字に伸ばして仰向けになった。太腿が限界だ。友人が苦笑いをしながらストレッチをするよう促し、トイレの脇に置かれた飲み […]
第六百六夜   家庭教師のバイト先に着くと、教え子がマスク越しにもわかる笑顔で出迎えてスリッパを用意してくれた。ここ数週間ほど妙に表情が暗くなっていて心配をしていたのだが、何か悩みでも解決したのだろうか。 スリ […]
第六百五夜   夕食後の片付けをしていると水がすっかり冷たく、約半年ぶりに手が悴んでしまった。 夏場は湯槽に浸かる習慣がないのだが、そろそろ身体を温めて寝る時期かと湯槽の底に栓をして給湯器を操作して卓袱台の前の […]
第六百四夜   趣味の野球観戦で外野席から写真や動画を撮りたいと思い立ち、写真を趣味にしている後輩を仕事上がりに焼き鳥屋へ誘った。一通りの相談を終えて、彼が勧めてくれたカメラをタブレットで検索する。 出てきた中 […]
第六百三夜   定期試験の初日、午前で三教科の試験を終えて、秋雨の降る中を帰宅していた。急に秋めいて肌寒い住宅街は昼下がりということもあってか人気が無く、細い道を通る車も無い。ただ傘を打つ雨滴のノイズを聞きなが […]
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