第六百三十三夜

 

数年に一度と報じられる寒波の中、強い北風に吹かれながら首を窄めて帰宅した夜勤明け、自宅に着くと門の前は勿論、猫の額ほどの庭にまでゴミが吹き寄せられていた。

枯れ葉の類ならまだ良いが、コンビニエンス・ストアのホット・スナックや紙コップ、に即席麺のプラスチック容器には辟易する。風呂と晩酌は暫く我慢し、まずは掃き掃除をと小さな物置へ向かうと、家と物置の接する角に薄汚れたウサギのぬいぐるみが座っている。風に吹き付けられたのなら建物の角にあるのは理解できる。しかし都合よく尻を下にして座る格好になどなるものだろうかと思うと気味が悪い。風雨で付いたと思しき泥は乾いた北風ですっかり乾燥してひび割れ、かさぶたを連想させてなおのこと不気味だ。

物置から箒、塵取りとゴミ袋を取り出してぬいぐるみを片付け、次いで庭を掃いて回る。門の外へ出て軽く落ち葉を掃き、次々に吹き寄せられるのを見てほどほどに切り上げる決心をしたところへ、顔見知りの宅配業者の車がやって来て
「おはようございます」
と互いに挨拶を交わす。通信販売の荷物がちょうど届いたのだ。
「流石に今朝は寒いねぇ」
「風が強いのが尚更ですね」
「そうそう、あんなにゴミが飛ばされてきて」
などと話しながらサインをして荷物を受け取り、門の脇に置いたゴミ袋を顎で示す。
「あのぬいぐるみも、飛ばされてきたんですか?」
と問われ、
「多分ね。さっき帰ってきたら物置の角に座ってた」
と答えると、
「気を付けて下さいね、最近強盗とか泥棒とか流行ってますから。ああいうのを庭なんかに置いて、家主の生活パターンとか性格を調べる連中がいるんだって、この前どこかで聞きました」
と彼は嫌に神妙な面持ちで言い、頭を下げて運転席へ小走りで戻った。

そんな夢を見た。