第七百六十四夜    たまの休日に遅く起き、顔を洗ってさっぱりしたところで昼前から酒でもと冷蔵庫を開けて、酒のストックを切らしていたことに気が付いた。この小さな贅沢のツマミに昨晩、出来合いの惣菜を買っておいたの […]
第七百六十三夜    大型連休に遊ぶ金も無く、食費を浮かせようと実家へ戻った。そこは今まさにお兄夫婦が生まれて間もない初子を育てている真っ最中で、邪魔者扱いされるかと思いきやこき使える人手として歓迎はされたが、 […]
第七百六十夜    久し振りの酒の席で、少々飲みすぎてしまった。疫病騒ぎで新入社員の歓迎会が開かれたのは四年ぶりだったろうか。今でも政府やマスコミが騒がないだけで、病院へ行けば医療関係者は警戒を緩めていないのが […]
第七百五十七夜    スーツに付いた春雨の雫をタオルで拭っていると、今年新入の女の子が出社してきた。彼女は荷物をデスクに置きながら、 「おはよう……」 と言った後目を丸くしながら絶句して、 「……申し訳……あり […]
第七百五十六夜    デートから帰って荷物を下ろすと、彼女が真っ先にしたのはスマート・フォンの充電だった。肩に掛けたターコイズ・ブルーの鞄から充電器とスマート・フォンとを取り出すと、卓袱台の脇に伸ばしたマルチ電 […]
第七百五十五夜   「うーん、こんなことってあるんですね」 と思わず独りごちたのを、男性社員がどうかしたのかと拾ってくれた。折角気にかけてくれたのなら、店の締めの作業の傍らの雑談がてらにと、昼に売られてきた高級 […]
第七百五十一夜    仕事を上がろうとしたタイミングで足止めを喰らい帰りが遅れてしまった。薄暮の帰路を早足で、既に学童から帰っているはずの息子の元へ急ぐ。春分も間近になって日の暮れきるのにはまだ時間があるとはい […]
第七百四十六夜    学年末試験まで一週間となった放課後、美術準備室へ忘れ物をしているのに気が付いて、仲の良い友人二人を誘って取りに行った。  準備室は普通の教室の三分の一ほどの広さで、廊下側の扉は施錠され、普 […]
第七百四十五夜    一つ小さな仕事を片付けてフロントへ戻ると、上司が営業スマイルを浮かべながらPCを操作していた。何かあったのかと尋ねると、彼女はこちらに視線さえ向けずに手を動かしながら、先ほどチェックインし […]
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