第五百四十夜   「ようやく春らしい陽気に恵まれるでしょう」との気象予報士の言葉を信じ、朝食を済ませて直ぐ一週間の洗濯物をやっつけてベランダに干すと、ここのところ続く窮屈な日常の息抜きにとドライブに出掛けた。 […]
第五百三十九夜   早番の勤務を終える十分前、いつも通りに遅番の者とフロント業務の引き継ぎをしていると、その脇で電話が鳴った。 その呼び出し音の音色でそれが内線だとわかり、最も子機に近い私が反射的に受話器を取る […]
第五百三十八夜   日付の変わる十分前、いつも通りに夜勤の者とフロント業務の引き継ぎをしていると、その脇で電話が鳴った。 その呼び出し音の音色でそれが内線だとわかり、最も子機に近い私が反射的に受話器を取る。本体 […]
第五百三十七夜   スマート・フォンから試験時間の終了を知らせるタイマが鳴って、椅子の上で両拳を突き上げて背筋を伸ばした。塾の先生からは時間を掛け過ぎずに解けるようになれば高得点を狙えるのでその練習をしろと言わ […]
第五百三十六夜   晩酌をしながらだらだらとネット配信のニュースを見ていると、動画配信サービスで冬場の恐怖映画特集なるものが開催されているとの広告が目に入った。 酔いが回る前にシャワを浴び、食卓兼万年床の炬燵に […]
第五百三十五夜   混雑した列車を避けて退社を遅らせると、最寄り駅前の量販店で出来合いの惣菜を見繕って家路に着いたのは午後十時の少し前だった。 定時あたりで退社をすると帰りの電車が随分と混み合うようになってきて […]
第五百三十四夜   早朝、朝日の照らす海が綺麗だと子供に起こされテントを出る。 小学校低学年で好奇心の塊のような弟に引き摺られ、海を見下ろす崖へと出ると、元々が低血圧の気のある姉が、父母のキャンプ趣味に付合わさ […]
第五百三十三夜   風呂上がり後のあれこれを終え、いざ寝ようかというとき、お客の言葉を思い出した。 ――四角い部屋の真ん中に布団を敷き、四隅を順に見回しながら寝る。 それは、金縛りに遭う方法だという。節分に恵方 […]
第五百三十二夜   風呂から上がり、濡れた身体をタオルで拭きながら晩酌のツマミに何を作るか、冷蔵庫の中身を思い出しつつシミュレートしているうち、 「しまった」 と思わず独り言ちた。ちょうど昨晩、買い置きの酒を切 […]
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