第五百六夜   帰宅の電車に揺られながら、疲れ目を癒やすべく目を閉じて手三里のツボを押していると、近くに座った学ラン姿の二人の、ちょうど声変わりの時期らしい声が耳に入ってきた。 「お前、いつもそれ食ってるよな」 […]
第五百五夜   隣の盆地へ呼ばれた仕事の帰り、黄昏時の山中を車で走っていると霧が出た。この辺りではよくあることとフォグ・ランプを付け速度を落として走っていると、見る間に霧が濃くなる。ボンネットの半ばから先すら見 […]
第五百四夜   管理人の趣味でカボチャやら黒猫やらの飾り付けられたエレベータ・ホールで、夕食の入った買い物袋を手持ち無沙汰に揺らしながらエレベータの降りてくるのを待っていた。 やがてエレベータの扉が開き、一歩踏 […]
第五百三夜   このところすっかり鈍った足腰を鍛えるべく、朝起きして久し振りに手入れをした自転車で近所を走ることにした。その程度で何の鍛錬になるかと思われそうだが、この辺りは谷の付く地名に恥じることのない起伏に […]
第五百二夜   仕事帰りに買ってきたビールをグラスに注ぎ、焼き鳥を串から外して皿に並べて晩酌の準備が完了した。 ナントカ宣言だかが久し振りに解除されたので外で飲もうと思えばそれが出来ないわけではない。が、今日は […]
第五百一夜   帰宅して玄関の戸を開けると、一瞬遅れて灯りが点く。下駄箱の前に置いたゴミ箱に外したマスクを捨てて靴を脱ぎ、上着を土間の壁のフックに掛ける。上がり框を上がってそのまま流しと風呂・トイレとに挟まれた […]
第五百夜   酒類の提供が解禁され、友人と久し振りに共通の好物である沖縄料理を食べに出掛けた。 自宅でレシピを真似ても何故か再現出来なかった懐かしいあれこれの風味に舌鼓を打つうち、まだ夜も浅いのにラスト・オーダ […]
第四百九十九夜   腹も熟れてきた昼下がり、散歩がてら少し大きな公園まで歩き、秋らしい植物でも写真に収めようかと家を出た。 もう十月だというのに、よく晴れて気温が高い。真夏に比べれば数度気温も湿度も低く過ごしや […]
第四百九十八夜   提出課題を終えたご褒美にアイスでも買おうかと近所のコンビニエンス・ストアへ向かうと、既に町は薄紫色に包まれていた。秋分を過ぎてすっかり陽の落ちるのが早くなったものだ。 コンビニの中で包装を破 […]
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