第四百八十一夜   息子が夏休みの自由研究に天体観測をしたいと言い出して、まだ明るいうちに狭いベランダで三脚を立て、学習雑誌の付録に付いてきた小さな望遠鏡を組み立てて固定させられる。彼曰く、夕食を終えて日が暮れ […]
第四百夜   夏休み中の学校で開かれている水泳の特別授業を終えて帰って来るなり「痛いから見てくれ」と要求し、ワンピースの裾を捲くってこちらに背を向ける娘の尻に、確かに左右二つの大きな青アザが出来ていた。 薬を求 […]
第四百七十九夜   帰宅して宿題をしていると玄関の開く音がして、弟が習い事から帰ってきた。 彼は部屋に入ってきてバタバタと荷物を置きうがいと手洗いを済ませると暫くあちこちを見て回り、再び部屋に戻ってきて、 「あ […]
第四百七十八夜   顔を洗い、身支度を整えて自室を出ると、隣室の扉が開いたまま、中からごそごそと人の動く気配がした。 通りがかりに中を覗くと、箪笥の前にしゃがみ込んだ寮長が紙袋にその中身を詰めている。 ――ああ […]
第四百七十七夜   疫病騒ぎで思うように会って遊ぶことの出来ない夏休みの夜、クラスの有志十人程でメッセージ・アプリを使って百物語の真似事をした。もちろん十人で百話も語るのは無理だから、それぞれ一話ずつだったが、 […]
第四百七十六夜   終業式の朝、いつもの時刻にいつもよりずっと軽いランドセルを背負って家を出た。 学校は自宅から駅とは反対方向で、同じ路地に同年代の子が住んでいないから、交差点に出るまでは駅へ向かう大人達とすれ […]
第四百七十五夜   学校の補修から帰宅して直ぐ洗濯機に水を張り、脱いだ衣類を放り込んでそのまま浴室に入った。夏に外を歩くと散歩程度でもシャツを絞れるくらい汗を掻くもので、着替えぬまま過ごしていると生乾きの匂いに […]
第四百七十四夜   一学期末の定期試験を終えた午後の帰宅中、空に黒い雲の広がるのを不安に思っていると案の定、周囲が光ったかと思うと数秒の間を置いて雷鳴と雨粒とが降り掛かってきた。 鞄には折りたたみ傘が入っている […]
第四百七十三夜   知り合いの勤める中古車販売店へ、手頃な車がないかと連絡を入れると、幾つか勉強できるものがあるというので買い物前に訪ねてみた。 乗っている車のバッテリにガタが来て、交換と言ってもそれなりの金額 […]
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