第四百七十三夜

 

知り合いの勤める中古車販売店へ、手頃な車がないかと連絡を入れると、幾つか勉強できるものがあるというので買い物前に訪ねてみた。

乗っている車のバッテリにガタが来て、交換と言ってもそれなりの金額になる。全体にくたびれつつ有る今の車を、日進月歩のバッテリだけ古い技術で作られた新品にするのもスッキリしない。もう暫くは週末の買い出し程度にしか使わないだろうものにそう金を掛けてもいられない。

そんな事情やら心情やらを説明しながら友人に幾つか候補を見せてもらっていると、年式も新しく走行距離もごく僅かでいて、ひときわ安い一台が目に入る。

派手な赤色が気に食わぬので買う気は無いが、
「これはどうなの?もしかして事故車?」
と興味本位に聞いてみる。
すると彼はわずかに眉根を寄せて、
「事故は起こしてないのよ、事故は」
と難しい顔をする。

勿体付けずに聞かせろとせがむと、
「小金持ちの奥さんがちょっとした買い物に使っただけの車でね。だからほとんど走ってないんだけども……」
その奥さんに偏執的な嫌がらせをするご近所さんがいたという。色々と小さな嫌がらせから始まり、それがエスカレートして終には猫の死体をガレージに放り込まれ、それが一晩乗っていたのがこの車だそうだ。
「事故どころか動物を撥ねたこともない車なんだけども……」
と額の汗を拭い、
「他の事故車が売れてもこれはずっと残ってるんだよねぇ」
と首を傾げた。

そんな夢を見た。