第三夜 まだ肌寒い初春の午後である。陽溜まりに腰を下ろし、右膝を抱えるようにして足の爪を切っていると、窓越しに 「ちょっと、あんた」 と声がした。威勢のよい八百屋か魚屋の女主人を連想させるその声の有無を云わせぬ強制力に膝 […]
第二夜 「ほら、見えてきましたよ」 強いくせ毛に彫りの深い赤ら顔の男が船首の向こうを指差した。指の先には分厚い黒雲の下に赤紫色の遠い空、さらにその下に、 「あれが地獄の観光名所、地獄富士でさぁ」 と男が自慢気に言う通り、 […]
第一夜 万年筆の青黒いインキで細やかに線描された紳士の顔。それだけが意識にあった。 その顔の口髭の下の唇が、発声練習のお手本のように几帳面にこう動いた。 「こんな夢を見た」。 それを聞いて、これは夢だと気付いた。夢だと気 […]
今年最後の夢はどのようなものになるでしょうか。 来年最初の夢はどのようなものになるでしょうか。 只今、鋭意企画始動準備中です。お楽しみに!
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