第二十五夜
給食を食べながら、一体どんな話の運びだったか、放課後に教室へ集まってコックリさんをしようということになった。
できるだけ雰囲気があったほうが好い。冬の陽の傾く四時半頃、一遊びしても最終下校には間に合うだろう時刻を選んで集まると、教室にはインフルエンザで暫く休んでいた男子生徒がその間の授業中に配られた課題を黙々と片付けている。
女三人寄れば何とやら、折角だからと口々に彼を誘うが、自分のことは気にせずどうぞと言って断る。わざわざ人気のない頃合いを選んだのにこれでは雰囲気が壊れるかとは思ったものの、わいわい言いながらルーズ・リーフに赤いボール・ペンで鳥居を描き手分けして五十音を並べ終わると、何か特別の儀式を執り行うのだという実感に、息詰まるような胸の苦しさを感じ始める。
皆いやに真剣な面持ちになって、鳥居の側に置いた十円玉の上へ三本の人指し指を乗せ、
「コックリさんコックリさん、お越しください。お越しくださいましたら、鳥居の中へお入り下さい」
と唱和する。ふと勉強の邪魔をして申し訳ないと思い男子を振り返ると彼と目が合い、気不味くて直ぐに目を逸らす。
幾度か呪文を唱えたところで、背後からガタリと大きな音がして皆が肩を震わせるが、誰一人十円玉からは指を離さない。
「ああ、ごめん」
と背後から謝罪。課題を終えたので荷物を纏め、職員室へ提出してから帰ると言う。まだ十円玉は動いていないから、今から参加しないかと改めて誘うが、やはり断る。
じゃあまた明日と挨拶をして、彼の後ろ姿を見ていると、扉に手を掛けて動かなくなる。彼は数秒の間を置いて、ゆっくりとこちらを振り返り、
「開かないんだけど……」
と言う。
そんな夢を見た。
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