第八十三夜   終電を最寄り駅で降りると、疲れきった頭と身体は習慣に引き摺られて半ば無意識に改札を出て家路を辿る。 駅前のロータリーを抜けて交差点を斜めに渡ると、そのまま公園へ入る。律儀に公園の周囲を周るより中 […]
第七十八夜   強くはない酒を無理に呑み、終電でようやく帰宅した。これも仕事のうちとはいえ、心にも身体にも負担は大きい。自分がまだ若いと思えるうちに、他の仕事に回らなければ。 そんなことを考えながら、兎に角風呂 […]
第七十七夜   柿や栗といった秋の味覚と引き換えに山の手入れを手伝ってほしいと友人に頼まれて引き受けた。早朝迎えに来た車に揺られて一時間、彼の実家で軽トラックに乗り換えて十五分ほど経ったろうか、山の中腹にぽっか […]
第七十六夜   「いやね、働いてる身としてはサ、実際ただの職場だから」。 わざとらしく眉を顰め、いかにも飽き飽きしているという様子で男が言う。酒の席で彼の職業を初めて聞いた者は必ず、何か不思議な体験をしたことは […]
第七十五夜   旅先の山中に人気のない神社を見付け参拝を済ませると、奥の蔵の石段の陽溜まりに腹を出して眠る一匹の三毛猫がいるのに気が付いた。 リュック・サックからカメラを取り出してその前にしゃがみ込むと、彼女は […]
第七十一夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客 […]
第七十二夜   大学の夏休みは長過ぎる。そんな時間を持て余した学生達が集まる大学のサークル室で、時折雑談を交わしながら、あるものは勉強をし、またあるものは代々伝えられてきた漫画を読み、ゲームに興じている。 盆に […]
第六十九夜 事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪の女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもかと派手な服装と化粧をしていることも […]
第六十八夜 運動不足を解消するのに、少々高い自転車を買った。道具を用意したのはいいのだが、元来が運動不足になるような出不精だ。単に運動のため出掛けるのが億劫なのは言わずもがなである。そこで一念発起して、休日には手頃な観光 […]
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