第五十八夜 路線バスを降りると、空梅雨のお天道さまがじりじりと肌を焼く。帰りのバスの時刻を確かめようとバス停の時刻表の前に身をかがめると、川を渡って来る風が肌の熱を幾らか奪ってくれるのに気が付く。 その風に乗って、某園の […]
第五十六夜 もう夜も半ばというのに相変わらず不快指数の高い空気の絡みつく中を、自転車で友人を先導しながら走る。 私を追いながら、アスファルトとコンクリートが日光を溜め込むのだ、密度の高い住宅やビルがエアコンを点け続けるか […]
第五十五夜 湯上がりの火照った肌を浴衣の生地が撫で、肌と生地との間に風が通るのが心地よく、ついつい大股で歩いて部屋へ戻ると、仲居がちょうど布団を敷き終えたところだった。 失礼しましたといって頭を下げる彼女にいい湯だったと […]
第五十一夜 雨が降らぬからいつまでも蒸し暑く、寝苦しい夜が続く。おまけに空調が故障し、時期が時期だけに工事の手配に時間がかかるというので、もう何日も苛苛と睡眠不足の夜を過ごしている。 高い不快指数に苛だったような、それで […]
第四十九夜 ピィーヨ、ピィーヨと音がして、はっと目が覚めた。二階の出窓で日向ぼっこをしているうちに、いつものことながら眠っていたらしい。瞳を細めて音のした方を見やると、枯れ草色の鳥が一羽、木に留まって辺りをキョロキョロ見 […]
第四十夜 用水路でカワニナを集めていると、下流の方から腰の曲がった白髪の老爺がやってきて、互いに挨拶を交わす。少し先の荒れた畑の前の畦道に、老爺は担いだ麻袋をどさりと下ろし、続いて腰を下ろした。 畑はまだ起こされていない […]
第四十六夜 西の空に半月の沈みかける頃になって漸く一仕事を終え、社用車を駐めたコイン・パーキングまで住宅街の路地を歩いている。昼間まではじめじめと蒸し暑かったが、日が暮れたからか、北風でも吹いたのか、いつの間にやら空気は […]
第四十五夜 事務所で机に向かいカタカタとキィ・ボードを打っていると、「こんにちはー」と語尾の間延びした大声とともに長い茶髪の女性が入ってくる。 仕事上の知り合いで、まだ若いのにこれでもかと派手な服装と化粧をしていることも […]
第四十三夜 柿の木の葉が茂ってきた。面倒ではあるが毎年のこと、仕方がなく重い腰を上げ、殺虫剤を撒くことにする。 噴霧器に殺虫剤を入れ、ポリタンクを背負って木に向かう。風向きを確かめていると、雀が数羽飛んできて、何をしてい […]
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