第七百六十五夜    連休の谷間のある日、講義の時刻に間の空いた者がサークルの部室に数名集まった。各々、スマート・フォンでゲームをしたり、課題を片付けようとコピーしたテキストにマーカとペンとで何やら書き込んだり […]
第七百六十四夜    たまの休日に遅く起き、顔を洗ってさっぱりしたところで昼前から酒でもと冷蔵庫を開けて、酒のストックを切らしていたことに気が付いた。この小さな贅沢のツマミに昨晩、出来合いの惣菜を買っておいたの […]
第七百六十三夜    大型連休に遊ぶ金も無く、食費を浮かせようと実家へ戻った。そこは今まさにお兄夫婦が生まれて間もない初子を育てている真っ最中で、邪魔者扱いされるかと思いきやこき使える人手として歓迎はされたが、 […]
第七百六十二夜    事故で大幅に遅れた列車に朝から不機嫌に事務所に着くと、いかにも寝不足と言いたげな隈を目の下に作った同僚がデスクの前で虚ろな目をして珈琲をスプーンで掻き回していた。その余り窶れた様子に自分の […]
第七百六十一夜    昼食から帰ってくると同僚から、 「あのカメラ、駄目だったみたいです」 と、写真屋のロゴの入った薄い封筒を渡された。何のことかとキヲクを辿りながら封筒を開けると、ネガの収められたビニル・シー […]
第七百六十夜    久し振りの酒の席で、少々飲みすぎてしまった。疫病騒ぎで新入社員の歓迎会が開かれたのは四年ぶりだったろうか。今でも政府やマスコミが騒がないだけで、病院へ行けば医療関係者は警戒を緩めていないのが […]
第七百五十九夜    仕事から帰って来ると、普段にも増して騒がしい息子とそれを羨ましげに目を輝かせる娘、そして普段になく憂鬱そうな妻とが出迎えてくれた。三人揃って出迎えてくれる絵面と言うだけでも十分に珍しいのに […]
第七百五十八夜    ふと目が覚めると付け放しになっていたTVの画面左上に九時を少し回った時刻が表示されていた。晩酌をしながらうたた寝をしてしまっていたらしい。浴衣にどてらを羽織っただけの姿だったので、まだアル […]
第七百五十七夜    スーツに付いた春雨の雫をタオルで拭っていると、今年新入の女の子が出社してきた。彼女は荷物をデスクに置きながら、 「おはよう……」 と言った後目を丸くしながら絶句して、 「……申し訳……あり […]
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