第三百十七夜   正月二日の夜、大学のサークルで知り合った同性の友人から、 「突然で申し訳ないが、暫く家に泊めてくれないか」 と連絡が来た。 実家暮らしの彼女がわざわざ私の狭いアパートに泊まりたがるとは一体どう […]
第三百十六夜   「どうしたの」 と隣の机から同僚に声を掛けられて、口を突いて出た言葉は、 「いや、携帯電話がそこの充電スタンドにあったものだから、びっくりして」 というものだった。 全く要領を得ない私の返答を […]
第三百十四夜   大学のゼミ生が集まって二年参りが企画された。歳のいった教授曰く、彼自身は全く関与していないのだが、学生の側で勝手に始められた、昭和から続く伝統らしい。 カウント・ダウンの一時間前に駅前で集まっ […]
第三百十一夜   リビングのソファで上の娘が塾の宿題を解くのを後ろから眺めていると、廊下の戸が開いて柚子の香りが漂ってきた。 続いて寝間着姿の下の娘がロボットのように手脚をぴんと伸ばして登場し、妻がその髪をタオ […]
第三百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、最近、生物室で授業あった?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少な […]
第三百九夜   朝から電車に乗って適当な駅で降り、ぶらぶらと知らない街を歩いて写真を撮って回るのを趣味にしている。 今日も秋晴れの空の下、赤く実った万両の実やら、それをついばみに来る野鳥やらをフレームに収めなが […]
第三百八夜   アルバイトを頼んでいる子達のシフトの都合が上手く付かず、深夜から朝までの店番の後、六時間だけ休憩を挟んで昼からもう一度店に入らなければならなくなった。自宅はすぐ近いとはいえ、時間が短いので帰宅し […]
第三百七夜   部活の朝練習を終えてジャージ姿で教室へ駆け込んだのは、ホームルームの始まって二分ほど経過したところだった。顧問が時間にだらしなく、後片付けを担当する一年生が始業時刻に間に合わないのはいつものこと […]
第三百夜   金曜の夜に夜行バスで東京へ来て、一日あちらこちらの庭園の写真を撮って回ると、冬至も近付いて黒々と澄んだ晩秋の空は月の見事な夜になっていた。 明日の夕方には再び高速バスに乗る予定だが、それまでの時間 […]
最近の投稿
アーカイブ