第三百三十八夜

 

暇なバイト仲間で集まって酒を飲むことになった。暇というのは事実でありつつ、バイト仲間の気になる子を呼んで仲良くなろうという魂胆で、家主である女友達と共謀して互いに意中の相手を誘ったわけだ。

時節柄、外で飲み食いをすることに皆抵抗があり、男女二人ずつの四人で簡単なつまみを作り、レンタル・ビデオ屋でホラーものの映画を流しながら酒を飲む。

女友達が猫を被ってキャアキャア言いながら後輩の腕にしがみつくのを半ば呆れながら眺めつつ、こちらも後輩女子の肩に手を回してみたりする。彼女の方もまんざらでもなさそうである。

そうこうするうち借りてきた映画も見終わって、映画からの流れで怪談話をすることになり、TVか何かで見聞いたような話をしていると、後輩の男が、
「うちの中学に変わった話があったんですよ」
と切り出した。

彼の学校がまだ創立して間もない頃、今から四十年近く前、学校が荒れに荒れていたいたのだという。粗暴な非行少年をツッパリとか呼んで、それが格好いいような描き方をする漫画やドラマが当たり前だった時代、それに流される子供も多かったらしい。

創立間もない彼の学校も窓ガラスは毎週のように割れ、トイレは男女問わず煙草の吸い殻だらけだった。
「ああ、うちの中学もそんなだったって、先輩から聞いたことある。先生があんまり来ない体育館のトイレで、大きくなる前に赤ちゃんを堕ろして流したトイレから鳴き声がするとか」
と、女友達が合いの手を入れる。
「トイレの怪談って大概女子トイレだよね。花子さんとか」
「それが、うちの中学では全然そんな話はなくって」
「それなら怪談にならないじゃないか」
「それが、男子トイレの方なんですよ、二年生の」。

当時はどの学年も荒れていて、二年生が特にというわけではなかったのだが、あるクラスの担任がいけなかった。まだ若く、線が細く、要するに舐められ易かった。その頃は校内暴力なんて今は流行らない言葉が当たり前に使われていて、その教師が被害に遭った。殴る蹴るでも十分酷いのだがトイレの便器に溜まった水へ顔面を押し付けるだとかの陰湿な暴行もあり、教師の方も気を病んでしまった。
「それでとうとう、その教師は……」
「その恨みのあるトイレで自殺した……とか?」
「いや、禿げたんです」
「は?」
と、後輩を除く三人の声が見事に重なる。
「で、それ以来、二年の男子トイレの真ん中の個室を使うと、その先生の呪いで卒業までに禿げるから絶対使うなって、代々言い伝えられているんです」
と目を剥いて怖い顔を作る後輩に、確かに男にとっては怖い話だと皆で笑った。

そんな夢を見た。