第二百九夜   仕事柄、初売りの三ヶ日は寝食の暇もない。それでも三年目となると要領が掴めているので、大掃除や衣食の用意を前倒しにすることで少しでも本番に余裕を持たせる策を講じられるようになった。 それでも天候の […]
第二百八夜   クリスマスの晩だというのに夜番で、詰め所に先輩と男二人で暇を持て余していた。 泥氏だってクリスマスくらいは仕事を休みそうなものだが、先輩に言わせると案外そうでもないそうだ。いくら仕事熱心でも泥棒 […]
第二百五夜   ドリンク・バーから食後の珈琲を手に窓際の席へ戻ると、頬杖を突いた友人が窓外の冷たく澄んだ青空を見上げながら、カゲウツシをやったことはあるかと尋ねる。 何のことか見当も付かぬと首を振る私を振り返っ […]
第二百二夜   行き付けのバーで友人に待たされ、独りでスマート・フォンを弄りながらカクテル・グラスを舐めていると、手の空いたマスタがグラスを磨きながら、 「お連れの方は」 とカウンタ越しに声を掛けてくれた。 ス […]
第百九十七夜   休み時間の終わり際、子供達を教室へ戻るよう促しながら受け持ちの教室へ向かっていると、廊下の突き当りの扉の向こうからこちらを覗く子供の姿が見えた。 突き当りにはアルミニウムの枠に上半分がガラス張 […]
第百八十九夜   大学のサークルで参加したイベントの後片付けに手間取って、終電を逃した。 しかし、家の近い友人を持つ者も少なくなく、始発の動き始めるまで居場所の無いのは私を含め五人で、駅から近い二十四時間営業の […]
第百八十六夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百六十三夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい都市伝説、仕入れちゃった!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の […]
第百五十四夜    パァン 梅雨空に似合わぬ乾いた破裂音が耳をしたたか貫いたのは、しとしとと雨の降り続く夕暮れの図書館でのことだった。 一体何が起きたのか。 貧乏学生の鞄を盗むものも居まいと、取り急ぎ貴重品だけ […]
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