第五百七十六夜   どうにかこうにか期末試験を乗り越えて、後は全校集会を乗り越えれば夏休み、全校生徒が体育館に集まって整列した。全国的に疫病騒ぎがぶり返しつつある中、特に有名な観光地のあるでもない我が地域では全 […]
第五百七十五夜   友人に誘われて助手席に乗り、山中の夜道を走っていた。特に何の目的があるわけでもなくガソリンを消費する、いわゆるドライブという行為である。特にそれを趣味にしているわけではないが、助手席で寝てい […]
第五百七十四夜   バイクの事故で脚を折って入院して約一週間、そろそろ退院してリハビリという頃合いの土曜の朝に、友人が夫人とともに見舞いの果物を持って見舞いに来てくれた。 入院中既に幾度も連絡を取り合っていたの […]
第五百七十二夜   バイト上がりの夕方六時頃、夏至が近付いて日が暮れるのも随分遅くなったものだと夕焼けを眺めながら帰宅しようと自転車に跨ったとき、スマート・フォンに着信があった。 ポケットから取り出して画面を見 […]
第五百六十八夜   配送から帰ってきた新入りのドライバが、駐車場に車を停めるなり顔を真っ青にして事務所へと駆けて行った。 ――ああ とちょっとした予感がする。手元の仕事に一区切りを付けてから、事務所へと様子を見 […]
第五百六十七夜   同棲中の彼女が派遣先を辞めたいと相談してきた。半年ほど前に紹介された小さな旅行代理店で、前社長が亡くなった後にその夫人が後を継いだタイミングで人手が足りなくなったという。 前社長の業務を夫人 […]
第五百六十五夜   よく晴れて見晴らしの良い田舎道を自転車で走っていて、ふとその光景に見覚えがあるのに気が付いた。 といって、ほんの一ヶ月半ほど前にも同じ道を同じように走ったのだから風景に見覚えがあって当然だ。 […]
第五百六十四夜   トレイに載せたカップ二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、新しい御札!作ってきた!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少 […]
第五百六十三夜   駅に着いてプラット・フォームへ出ると、そこに待つ人々は既に疎らだった。疫病騒ぎの中にわざわざ満員電車に乗ることもあるまいと、出社の時間を遅らせて晩く帰ることにしているからだ。 中でも途中駅で […]
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