第五百八十一夜

 

相変わらずのテレワークで自室にてPCのキィボードを叩いていると、いつの間にかパタパタとベランダを雨の叩く音がしていた。夕立と呼ぶには少々日が高いが、朝方見た天気予報では夕立、雷雨を警告していたのを思い出す。

一頻り雨が降って多少は涼しくなるだろうか、それとも湿度ばかり上がって却って蒸し暑くなるだろうか。仕事上がりに買い物に出掛けねばならぬので、その頃には多少でも涼しくなっているといいのだが。

そんなことを頭の片隅に考えながら仕事をしているうちに集中力が切れたか尿意を覚え、席を立つついでに珈琲でも淹れてこようとマグカップを手に腰を上げる。

電気ケトルを水で満たしてスイッチを入れると、辺りが急に薄暗くなるとともに雨音が不意に高くなり、雷鳴が轟く。いよいよ本格的に夕立か。落雷でPCにダメージが行かぬよう、慌てて机に戻ってACアダプタを抜いておく。雷の過ぎるくらいまでならバッテリで十分に動くはずだ。

用を足して肩周りのストレッチをしていると電気ケトルの湯が湧き、珈琲を淹れて机に戻る。と、これまたいつの間にか辺りが明るくなっており、雨音も無くなっている。この程度の雨では蒸し暑くなるだけだろうと落胆しながらベランダへの掃き出し窓の外を眺めると、すっかり失念していた洗濯物が干してある。しまった、洗い直しだ。

とりあえず取り込んで洗濯機に放り込もうと窓を開けて手を伸ばすと、不思議なことに洗濯物が濡れている様子がない。雨が止んでから二分も経っていない。乾くほどの時間はなかっただろう。

それでもベランダの床のコンクリートには間違いなく雨が振り込んで濡れて色の濃い染みを作り、洗濯物の影になった部分のはっきりと乾いたままの明るい灰色とコントラストを作っている。

首を傾げながら、念の為に洗濯物を取り込むが、やはりどれ一つとして濡れているものはなかった。

そんな夢を見た。