第二百八十九夜   そろそろ日付が変わる頃合いに、レジスタをアルバイト仲間に任せ、バック・ヤードから明日発売の雑誌を運び出すことにする。 どこのコンビニエンス・ストアでも同じというわけではないかもしれないが、駅 […]
第二百六十四夜   ジョギングを始めて半年経ち、正月の初売りで買ったジョギング・シューズも随分とすり減った。そろそろ新しい靴を下ろそうかとも思うのだが、雨で走れぬ日、走れても足元の悪い日が続いてなかなか踏ん切り […]
第二百二十七夜   フクロウの石像を背に立って文庫本を開きゼミの友人を待っていると、 ――チリリ、チリリ 周囲の喧騒の中で妙に目立つ鈴の音に気付いた。声量は大きくないのによく通る声というものがあるのと同じような […]
第二百十九夜   カメラに三脚を持参して、近所の沼にやってきた。越冬に渡ってくる鳥を撮ろうという算段だったが、どういうわけか今日はどこにも姿が見えない。昨年の今頃は、沼の水草を喰むもの、魚を器用に捕らえるものな […]
第二百八夜   クリスマスの晩だというのに夜番で、詰め所に先輩と男二人で暇を持て余していた。 泥氏だってクリスマスくらいは仕事を休みそうなものだが、先輩に言わせると案外そうでもないそうだ。いくら仕事熱心でも泥棒 […]
第百八十夜   昼寝から目が覚めて伸びをすると、首元でチリンと耳に刺さる金属音がする。おやと思って俯くとまたチリンと鳴るが、視界に入る限り何もない。どうやら首輪の下に鈴が付けられているらしい。 音に気付いた同居 […]
第百五十八夜   アパートへ帰って扉を開けると、上がりかまちの上に前足を揃えた虎猫がこちらを見上げて小さく鳴く。いつものお出迎えに対して私もいつも通り帰宅の挨拶をしながら灯を点け、パンプスを脱ぐ。 いつも通りに […]
第百四十四夜   一ヶ月ぶりに取引先を訪ね、担当者に応接室へ招かれて中に入ると違和感を覚えた。 入口の扉の正面は大きな窓、部屋の中央に硝子の天板の卓、手前と奥とに革張りのソファ、部屋の四隅には観葉植物が置かれて […]
第百二十九夜   コンビニエンス・ストアで晩酌のツマミを買った帰り、風もなく温かい夜で気分がよく、夜桜でも眺めようかと近所の公園へ足を伸ばした。 地元ではちょっとした大きさの公園だが、花見客が集まるほど桜が植わ […]
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