第三百二十二夜   温かい布団の魔力からいつもより三十分も早く抜け出し、母に急かされながらどうにか支度をして家を出ると、冷たく湿度の高い空気が頬に絡みつき、吐く息が顔の前で白くなった。 ――暖冬暖冬といいながら […]
第三百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、最近、生物室で授業あった?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少な […]
第三百七夜   部活の朝練習を終えてジャージ姿で教室へ駆け込んだのは、ホームルームの始まって二分ほど経過したところだった。顧問が時間にだらしなく、後片付けを担当する一年生が始業時刻に間に合わないのはいつものこと […]
第三百二夜   給食を終え、窓辺の席でうとうとと舟を漕ぎながら日光浴を楽しんでいると、 「ヤバい、ヤバい」 と連呼しながら幼馴染が駆け寄ってきた。 幼馴染といっても、家が同じマンション内の近くの部屋で、お互いが […]
第二百九十九夜   こんなに小中学時代の同学年の皆が集まったのは何年ぶりだろう。互いにちらちらと顔を見合い、当然目が合うのだがその度に、 「今は忙しいからまた落ち着いたらね」 というようなアイ・コンタクトをして […]
第二百九十五夜   娘の出し物が終わると、次の種目まですっかり暇になってしまった。妻は一度自宅に戻って昼食の弁当の準備をするからと言って帰宅し、手伝おうかと提案したものの、普段から碌に料理をしてこなかった実績に […]
第二百九十一夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「小学校の頃、組体操ってやったことある?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服 […]
第二百八十一夜   休日の午前十時、高校の最寄り駅への到着を知らせるアナウンスを聞いて座席を立つ。 毎日の登下校もこれくらいゆったりとした車内ならどれほどいいかと思いながら開いたドアをくぐると、残暑の熱気が顔に […]
第二百八十夜   ホームルームが終わると、皆が椅子を机に乗せ、教室の後部に寄せて床を広く開けた。見晴らしが良くなったと思う間もなく、そこへ段ボールや模造紙、絵の具が広げられ、ガヤガヤと思い思いにお喋りをしながら […]
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