第五百二十七夜   顔を洗って居間へ行くと、ソファで珈琲片手に新聞を読んでいた夫がちらりとこちらに目を向けておはようと言うのでこちらもいつも通りの挨拶を返す。 今日は夫が朝食の当番で、サラダは出してある、ハムエ […]
第五百二十六夜   数年ぶりに母の実家へ帰省して、とはいえ雪遊びに興じるような歳でもなくなり、祖母のお節料理作りの手伝いの他はほとんどだらだらと過ごす内に年が明けてしまっていた。 寒波が入って大雪になった夜、夕 […]
第五百十三夜   仕事帰り、久し振りに酒をと誘ってきた同僚は、一杯目の生ビールをギュッと目を閉じて味わった後、開口一番、聞いて欲しい話があると言い、胸ポケットの財布から一枚の写真を取り出した。 曰く、疫病騒ぎの […]
第五百十二夜   吊り革に体重を掛けながら電車に揺られていると、妻からメッセージ・アプリに連絡が入った。 後どのくらいで帰るのかというので、最後に通り過ぎた駅を思い出し、そこから逆算するに後十分程で最寄り駅だと […]
第五百七夜   東京方面へ高速道路を南下していると、昼前にこれから向かう先で事故渋滞の起きているとの報せが入った。 深夜からほとんど走り通しで距離は稼げていたし、期日までの猶予は十分にある。そこらのサービス・エ […]
第四百九十五夜   組み上がったPCに古いハードディスクを接続して起動すると、認識は無事成功した。依頼主の部下に内容を確認するように言うと、彼女は礼の言葉と共にカップ入りアイスを出して労ってくれる。 椅子を交代 […]
第四百二夜   東海道を箱根に向かって下り始めて小一時間、そろそろ上り坂になってきた。辺りの景色も、何が面白いのか子供の頃に親がテレビで付けていた駅伝で見たのか、どことなく懐かしい。 予約した宿の看板を見付けて […]
第三百八十一夜   一人暮らしの一週間分の食料の買い出しに街へ行った帰り、もう陽も沈みかけて薄暗い谷沿いの道を車で走っていると、道の真ん中にうずくまる白い人影が見えた。 速度を落としながら近付くと、ライトの中に […]
第三百六十八夜   珈琲を淹れ終えて席へ戻り弁当を広げていると、今年の新人がエコ・バッグを提げて隣の席へ戻ってきた。近所のコンビニエンス・ストアで昼食を買ってきたのだろう。 お帰りと一声掛けて、冷凍食品のコロッ […]
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